フランスのジャズフェスティバル、第15回Au Grès du Jazzで見られる、ビレリ・ラグレーン2つの顔。

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フランス北東部にある、北ヴォージュ地方自然公園Parc naturel régional des Vosges du Nordは、UNESCOの北ヴォージュ・プフェルツァーヴァルト生物圏保護区で有名な自然豊かな土地だ。そんなエリアにあるラ・プティット・ピエールLa Petite Pierreという場所で、国際的なジャズミュージシャンを集めたジャズフェスティバルが15年ほど行われているらしい。今年も8月5日~15日まで開催され、ざっとみただけでヤロン・ヘルマンYaron Herman、アヴィシャイ・コーエンAvishai Cohen、シャイ・マエストロShai Maestro、Hiromi、ヤン・ガルバレクJan Garbarekタック&パティTuck&Pattiと錚々たるメンバーが出演している。いずれもBlue Note TokyoやCotton Clubで単独ライブするような大物ばかりなのだから、いかにすごいフェスかがわかる。

ビレリ・ラグレーンBiréli Lagrèneは、ジャズトリオとしてジャン・リュック・ポンティJean Luc Pontyとカイリー・イーストウッドKyle Eastwoodとトリオで出演している他、Biréli Lagrène Acoustic Quartetという名義で、いつも共演しているフランク・ウォルフFranck Wolf、ホノ・ウィンテルステインHono Winterstein、ウィリアム・ブルナールWilliam Brunardとも出演している。ビレリの2つの顔が見られるなんて、観客がうらやましい。
仕方がないからこちらはArte Liveで放映されたらしいライブ映像で我慢するとしよう。
concert.arte.tv

R.I.P. Walter Becker from Steely Dan

某ポータルのトップニュースで、"Steely Danのギタリストが亡くなった"というようなサブタイトルを観たときは、「Donald Fagenではないな」と思っただけだった。でもちょっと待て。Steely Danのキーパーソンといえば、ウォルター・ベッカーWalter Becker、君ではないか…。

あわててニュースを確認すると、やはりウォルターだった。彼がギタリストという意識をもっていなかった私が悪い。プロデューサーであり作曲家であるという意識が強かったから…。

ニューヨーク育ちで皮肉屋、もとはサキソフォ二ストだったとか。非常に繊細な人物という印象。成功もあった一方で、表に出ていない時間も長かった。享年67歳なんて若すぎる死だ。ドナルドとウォルターを輩出した、(もっとも、ウォルターは卒業まではしていないが)Bard Collegeのツイッターでもウォルターの追悼メッセージが出ていた。


Donald Fagenはずっと好きだったけれども、その前段であるSteely Danを意識するようになったのは、Classic Albumsという、ヒットアルバムの誕生秘話をインタビューした番組だ。Ajaの収録曲がどのように出来上がったのか、二人からの口から次々飛び出すエピソードに感激し、少々衰えた姿でもいいからライブを見たいと思っていた矢先のニュースであった。

asquita.hatenablog.jp

Rolling Stone誌は、さっそくトリビュート記事を出している。ミュージシャンを想うには、曲を振り返るのがいちばんしっくりくるなぁ、といつも思う。
www.rollingstone.com

さ、どこからかAjaを引っ張り出して聴くかな。Black cowやDeacon bluesもよいが、Gauchoに入ったHey Nineteenも好き。
www.youtube.com

今晩は、Steely Danに浸る人、多いのではないか。

新作能舞 三酔人夢中酔吟―李白・杜甫・白楽天―改訂版公演@国立能楽堂

久々の能楽鑑賞。素人の感想をここに。
■琵琶三秘曲―流泉・啄木・楊真操(岩佐鶴丈-楽琵琶)
そもそも琵琶ってボディがふくよかなものと思っていたら、こんなにうすいものがあるんだね。調弦の関係で曲順に指定があったのだが、琵琶の調弦って大変なものなのだろうか。三味線みたいに弾きながらばしばし調子を変えていく楽器ではないのだろうな、きっと。
これらの秘曲は秘伝過ぎて一度伝統が途絶えてしまったものを、平安時代末期に藤原師長という人が楽譜に書き残したものを復元したらしい。
「啄木」という曲は、途中でボディをカツカツたたく演出があった。だから啄木なのかしら。「流泉」と「楊真操」は、「啄木」のような特徴はみられなかったが、いずれも意外にシンプルな曲で、難解なフレーズもなくて予想外だった。
遣唐使が唐で習って楽琵琶とともに持ち帰った曲が数々の有名人の手を経ていまに生きるなんてすごいことだと思う。琵琶をひく昔の人なんて百人一首に出てくる蝉丸とか耳なし芳一のイメージしかないのだが、その蝉丸もこの秘曲を受け継いでいたなどときくと、歴史のロマンを感じるのだ。
ところで「返風花調」とか「風花調」って、なんのことなんだろう。琵琶特融の調子?

新作能舞「三酔人夢中酔吟―李白杜甫と白楽天―」
野村四郎(李白)、櫻間金記(杜甫)、山本東次郎(白楽天

設定としては、まさに唐の時代の格好をした李白杜甫・白楽天が、昔を懐かしみながら、延々と酒を酌み交わしつつ昔語りをしている、というものだ。使われている楽器が、能管、尺八(ものすごく長いものと短いものを使い分けていた)、それに打楽器(ビブラフォンみたいなものと、銅鐸がいくつか並んでいるようなものを適宜使い分けていた)だったのだが、それだけでかなり作品の印象が違って、面白かった。しかも詩人の共演という設定なので、その台詞にいちいち色気があって美しい。遣唐使の時代を懐かしんだり、「今や自分たちの詩は日本でも受け入れらて、自分たちもまぁまぁ有名なんだぜ」と話してみたり。お能はそもそも時空や生死などの境目があいまいなものだと思うが、この作品も、まさに時空を超えてしまって登場人物が語り合うというシュールな作品だった。とくに山本東次郎氏の声が非常に明るく若々しく印象に残っている。何よりも、80歳をとうに超えた人間国宝の二人(野村四郎と山本東次郎)が、こうした新作を追及しようとするその心意気に感激した。台詞もかなりの分量だし、生半可な気持ちでは演じることができない作品だよなぁ。

今回の公演は大盛況だった。笠井賢一氏の解説も丁寧で理解の助けにはなった。でも、もう少し能の古典の知識が必要だったな。あとは唐の詩人たちのプロフィールなども知っておけばよかった。李白ってあの中島敦山月記の元を書いた人だ!と思って調べたら、あれは李微だったのはいい思い出だ。

Samson Schmittが登場! 第6回 "Raduno Mediterraneo Jazz Manouche"

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イタリアのシチリア島、ペトラリーア・ソッターナPetralia Sottanaで毎年8月末に行われるマヌーシュ・ジャズフェス"Raduno Mediterraneo Jazz Manouche"。今年は、Guest Starとして、サムソン・シュミットSamson Schimtt、それに、オランダのツィガーヌ出身ギタリスト、ロロ・メイヤーLollo Meierも出演したという。ロロは、2014年に本フェスのGuest Starだったのだが、今年はサポートミュージシャンの立場だったのだろうか。

サムソン・シュミットが出演している動画を発見したのだが、舞台上が賑やかなこと! 地元のミュージシャンが舞台に上がってきちゃった感じかしら。バイオリンを持っている黄色い服を来た少年の右手後ろにいるのは、ロロではないだろうか。サムソンの右隣にいるのが、フランスのギタリスト、ヤニス・コンスタンスYannis Constansだろう。ビブラフォン、ヴァイオリン、たくさんのギター、アコーディオン…。

Minor Swingのインプロヴィゼーションの中に、Wham!の名曲"Careless Whisper"が潜んでいる。大勢の人のセッションは、こういう思いがけない曲が挟まれてくるから、楽しいよなぁ。
過去の本フェスの記録はこちらにあります。
asquita.hatenablog.jp

三味線オペラ⁉︎


会社の近所でランチタイムコンサートをやっており、たまたま三味線と尺八のデュオによるコンサートだというから、足を運んでみた。街中で邦楽がきけるのって珍しいな…と思ったのだが、客層がかなり上ぶれていてびっくり。邦楽だからなのか、それともいつもそうなのか。

この日の演奏者は、地唄三味線の大友美由奈さんと尺八(都山流)の中島翔さんという方。観客に比べると、ますます若手な感じが際立つ。曲目は現代ものから尺八や長唄の古典だったのだが、すごく印象的だった曲がある。それが「三味線オペラ・猫に小判」というものだ。コントラバス奏者である溝入敬三さんという方が作ったもののようだが、歌詞が非常に現代的。「へぇ、三味線の現代曲にはこういうものもあるんだな」と感心した。楽曲には、小話が織り込まれており、これがすべて「猫に小判」という単語のしゃれに通じている、というわけ。具体的には、「根っこに小判」、「猫に交番」、「猫にこんばんは」、「猫にごはん」といった具合。
大友氏ご本人がピアノとの共演でこの曲を演奏している動画を発見した。

この曲は、知る人ぞ知る…というものなのかしら。色々なことを考える人がいるものだなぁ。

東京麻婆食堂にて担々麺を。


急に辛いものが食べたくなり、このお店の存在を思い出した。「東京麻婆食堂」。

14時近くに行ったのですぐに入ることができた。ここに来たら麻婆定食(1,000円)にも惹かれるのだが、今日は担々麺800円で。麺の硬さ、スープもちょうどよいからさであっという間に食べ終わった。

あとで花椒を発見! あーあ、かけながら食べればよかったな。次回は汁なし担々麺をゲットしようと思う。

WDR Big BandとJoscho Stephanが演奏するジャンゴの名曲"Blues En Mineur"

マヌーシュ・ジャズギタリストとしてドイツを中心に活躍しているヨショ・ステファンJoscho Stephanが、ケルンの有名なビッグバンド、WDR Big Bandと共演している映像を発見した。リハーサル映像ということで、ジャンゴの名曲"Blues En Mineur"を演奏している。

リハでこのクオリティか…すごい。近々ライブでもあったのかな…と思い探してみたが、日程から考えるとこのライブのように思える。この動画をみると、Joschoはここでは アメリカ出身のAkua Naruというヒップホップシンガーをギターで盛り上げている。
www1.wdr.de

幅広い客層のお客様がいるなかで、彼はどんな流れで自分の世界を作っていったのか、興味ある。きっとギターの表現力に圧倒されたんだろうな。