第14回ユネスコ記念能。シテ方5流派の女流能楽師による「葵上」を比べる。

f:id:asquita:20171011141935j:plain

第14回ユネスコ記念能に行ってみた。番組は、「葵上」、それに狂言の「因幡堂」。面白かったのは、シテ方5流(観世、金春、宝生、金剛、喜多)の女流若手能楽師が、同じ曲目を続けた上映したところかな。プログラムに法政大学能楽研究所の中司由起子氏による「能の流儀について」という紙が挟まっていた。
それによると、まず能楽師の役籍は7つありそれぞれが独立、専門化しているという。シテ方(主人公)以外は以下のとおり。
ワキ方(高安流、福王流、下掛宝生流
●笛方(一噌流、森田流、藤田流)
●小鼓方(幸流、幸清流、大倉流、観世流
●大鼓方(葛野流、高安流、石井流、大倉流、観世流
狂言方大蔵流和泉流

これら現存の各流儀には、たとえば謡本の文句や、節、舞の区切り、所作の名称、作法…囃子方であれば、打つ音と掛け声の組み合わせや演奏の旋律が違うらしい。狂言だったら、展開や結末すら違うことがあるらしい。

今回比較ができたシテ方の流儀だが、中司氏によると以下の特徴があるらしい。
観世流:謡本の節付表記が詳しく、繊細華麗な謡と優美な舞で、特殊演出の数が多く、洗練されている。
宝生流:謡文句の生み字を大切にしており、装飾的な高音を謡うといった独特の謡技法があるとか。通称「謡宝生」。
金春流:歴史が一番古い。中間音はぶいた結果謡の高低差がある結果、旋律が力強い。舞も勇ましい。
金剛流:流れるような印象の舞、謡の文句に即した大胆な所作が特色。「舞金剛」。
喜多流:江戸時代初期、能が幕府の式楽になってから成立した新しい流派。剛健でメリハリの効いた謡と舞。

せっかく解説を読んでから観たものの、結果…ものすごくわかるわけでもなかった。こういう、流儀や芸風が異なる演者の競演を「立合」というらしいのだが、「宝生はこの位置から扇をひらいて舞うんだな」とかそういう違いはわかったのだけれども、ではブラインドテストというか、この立合公演のプログラムをみないで流派を言い当てられるかといえば、ちょっと厳しい。謡の節回しの差なんてますますわからない。どこかの流派が自分の芯として頭に入っていると、わかるのかな。お能の世界を理解するにはまだまだ時間がかかりそうだ。

「葵上」を観た感想は…病床に臥せった葵上が、なんと出てこないところが印象的というか斬新だと思った。舞台に衣装を置いておくことで「物の怪に憑かれて病床に伏せた葵上」を表現しているのだ。シテは六条御息所の生霊で、これをなだめる祈祷師がワキで、上演タイトルが「葵上」だというのに葵上は演者ではない、という。そしてもうひとつの学びは、金春流や他の流儀では、「枕ノ段」と呼ぶことも知った。枕元で怒る怨霊と祈祷師、巫女の戦いだもの、そういうタイトルにした人の気持ちもよくわかる。

…とてもじゃないが、能を解する人の感想とは程遠いな…。

狂言の「因幡堂」は、酒飲みの妻と気弱な男のストーリーで、わかりやすかった。この妻、たいそう逞しいね。

Tartine Manufactoryで豪華朝ごはん@San Francisco (Mission)


MissionのTartine Bakeryは、ますますの人気でかなり並ばないとお目当てのパンにありつけないとか。そこで、地元に暮らす友人が、私を連れていってくれたのが、タルティン マニュファクトリーTartine Manufactoryという場所だ。窓から光が差し込むカフェスペースでは、朝から多くの人がコーヒーを飲みながら仕事をしている。そして観光客もたくさん。

サワードゥを大きなマシンでどんどん焼いている。注文を受けたものは紙袋に入れておいてある。


お店で使っているのは、Heathのお皿。丈夫で割れにくいと評判らしい。



創設者のひとりのパートナーが書いたというレシピ本、Tartine All Dayが店内に飾られていました。


朝ごはんは、ペストリー類とスモークサーモンのタルティーヌを試してみることにした。このあたりのお店って、決済はおしゃれなタブレットでやるようになっている。タルティーヌの出来上がりは、おしゃれブザーが知らせてくれる。



こちらが念願のタルティーヌ。このレモンピールが酸味と塩気がきいていて、サーモンにとっても合っています。コーヒーも店内でローストしたものなのかな。こだわりを感じる。

店内のレイアウト含めてよく雰囲気がわかるのは、こちらの記事をご参照ください。
www.bonappetit.com


ある程度おなかが満たされたら、お隣にあるHEATHの本屋や店舗を眺める。素敵な小物がたくさん。キャパがあればたくさん購入して持ち帰りができるのにね。


日本の手ぬぐいやこけしもあって、ベイエリアで受け入れられている美学において、日本の文化が高く評価されているということが分かり、素直にうれしく感じた。

ヒシモ@下北沢で久々のパクチー三昧。

パクチー食べたいけどどこかに連れて行ってほしい」という声が日に日に高まる今日この頃、友人とともに久々にこのお店にやってきた。私が一押しのパクチー屋さんである。店構えがクリーニング屋のようになっているため、少しわかりにくいのだが、パクチーの愛を感じるいいお店だ。ちなみに実家が下北沢の友人曰く、「昔は本当にここに洗濯物を出していたよ」とのことだった。


モパーチという、パクチーを使ったモヒートで乾杯をしてから…

パクチーサラダ、パクチーのもやしナムル、さつま揚げ、じゃこパクチーパクチー根っこのてんぷら、ラムパクチーパクチーパスタ、担々麺。どれも極上のお味だった。やっぱりここ、いいわぁ。たんにパクチーをのせました、というんじゃなくて、ちゃんとパクチーと食材がなじんでいる。しかもコスパよし。メニューも微妙に進化している。

2年ぶりに来たなんて信じられない!
asquita.hatenablog.jp

またたまには行こうっと。

美味な自然派アイスクリームはBi-Rite Creamery@San Francisco


友人がよく買い物に行くアラモスクエア近くのBi-Rite Marketには、アイスクリーム屋が併設されている。ここ、非常に美味しいので有名で、暑い日にはながーい行列ができるらしい。



黒糖しょうが、オリーブオイル、地元のチョコレート屋TCHOのチョコをベースにしたもの、ハニーラベンダーなどなど、スパイスやハーブを活用したアイスがたくさん用意されていて迷ったが、バジルのアイスにした。とっても美味だったが、美味すぎて写真等とるのをすっかり忘れてしまいましたとさ。

こちらがアイスのフレーバーリスト。ほぼ珍しいものばかりで、迷う…。
Bi-Rite Creamery Ice Cream | Bi-Rite Creamery


お値段はセレブ価格で、シングルカップ4.5ドル。(500円くらい?)すべてを試してみたい衝動に駆られてしまう。あーあ、ダブルにしておくんだった、と後悔。

ちなみにこのアイス屋が入っているスーパーのバイライトBi-Riteマーケットは小さいながらおしゃれ食材がたくさんそろっていて、おすすめです。お土産に使える、カリフォルニア地域で有名なチョコレートの品ぞろえも豊富。

San Franciscoの人気観光地"Ferry Building Marketplace"のキノコ専門店"Far West Fungi"


エンバカデロ地区にある"Ferry Building Marketplace"は、サンフランシスコ名物を入手するのにぴったりの場所だと思う。たとえば、Blue Bottle Coffeeブルーボトルコーヒー、サウサリードからやってきた有名陶器屋Heath Ceramicsヒースセラミックも、セレクトされたアイテムがこちらの店舗に並んでいる。

先日行ったおしゃれベトナム料理、The Slanted Doorも、こちらのビルに入っている。
asquita.hatenablog.jp



私が一番気になったのは、このお店。Far West Fungiファーウェストフンギという、マッシュルーム専門店だ。店頭には色々なきのこ類が並んでいる。


それだけではない。かわいいマッシュルーム本とか。(しかもカリフォルニアのマッシュルームだけを扱った本まで!)


看板もかわいければ…

もはやネスレになるBlue Bottle Coffee. 美味しい。


Tシャツのデザインもカワイイです。

ちなみにこのマーケットプレイスでは各店舗が20ドル前後でそれぞれオリジナルデザインのTシャツを出している。どれもセンスがいいので、お土産にしてもいいかもしれない。

The Walt Disney Family Museum@Presidio of San Francisco


ウォルト・ディズニーといえば、言わずと知れた「ミッキーマウスの生みの親」。彼がどのような幼少時代を過ごし、なぜミッキーマウスやディズニーの世界が生まれたのかを、家族の歩みとともに綴る美術館がある。それがこの、ウォルト・ディズニー・ファミリー・ミュージアムThe Walt Disney Family Museumだ。


入場料は25ドル。アプリをDLするか、受付で自分のIDやクレジッドカードと引き換えに音声ガイドを借りて中へ。

まずは生まれたところから。第一次世界大戦で年齢を詐称してまで赤十字の救援隊としてパリにわたった話、コメディが好きで同級生と組んで漫才コンビをやっていた、というのは意外だった。でもそんな彼の性格も、のちにコミカルなアニメーションを制作した背景にあったのかもしれない。


就職先でアニメーションの技術を身につけて、「アリスの不思議の国」を制作。このアニメをもってハリウッドに売り込みをかけて、見事成功。実写とアニメが融合したこの作品だが、契約の際にある女の子を起用することが条件だったため、この女の子をハリウッドの近隣に住まうように親を説得したとか。やはり物事を成功させる人は、情熱といい意味でのしつこさが違うな…と感じた瞬間。

その後、「幸せウサギのオズワルド」というキャラクターをつくって、これまた大ヒットするものの、途中でその版権を中間業者に奪われてしまう。ここでウォルトがすごいのが、みすみすと買収されずに、人気キャラクターを譲ってしまったことではないか。優秀なスタッフなどともども失うなか、ひねり出したのがミッキーマウスの原型。モーティマーという名前だったのが奥様に不評で、ミッキーマウスという名前になったとか。

アニメーションはどんどん進化していって、当時最先端のトーキーを使ったり、(そしてキャラクターたちに音楽を奏でさせたり)、遠近感を出す工夫をしてみたり、登場人物の表情で善人か悪人かがわかるようになっていたり、ウォルトのアイデアがどんどん試されているのがこの美術館の展示でよくわかった。また、キャラクターをつくるとすぐにグッズをたくさんつくってその売り上げを資金源にするあたり、事業家としても素晴らしい才能があったのだな。


戦時中、ポーイングの横にスタジオがあったことから、戦争プロパガンダや兵隊向けの仕事も積極的に受けることでスタジオを存続させたという話は衝撃だった。ドナルドダックも冷静に考えれば水兵だもんな…。

さまざまな困難に立ち向かうことができたのも才能ある故なんだな、ということがよくわかった展示だった。そして家族思いな面もよく伝わった。きっと、ウォルトとそのキャラクターたちが人気になりすぎてしまったことから、ディズニー一族は自分たちファミリーとの絆を残すためにこの博物館を作ったのかもしれない。

博物館最後にある、ウォルトが亡くなった時の新聞記事のイラストが印象に残った。

セールスマン


2016年、イラン、アスガル・ファルハーディー監督、The Salesman

仲良し夫婦、エマッドとラナは、劇団員としてアーサー・ミラーの戯曲「セールスマンの死」の上演に向けて稽古に励んでいる。私生活ではある事情で引っ越しを余儀なくされた二人。シーンは引っ越す前の家からはじまるが、この引っ越す前の家も、この映画の結末のキーとなる。

ある日、その引っ越し先で「事件」が起きた。自分にも多少は非があるかもしれない、との思いもあり、また恥ずかしさから事件を表ざたにしたくないラナと、犯人を探し出して制裁を加えたい夫のエマッドの心はすれ違いはじめる。エマの心理状況は演劇にも影響し、エマッドの動揺は普段の仕事である教師の仕事にも影響が出始める。

心理サスペンスと銘打っているだけあって、本当に最後まで目が離せない。そして、妻と夫の心がはなれていくさま、すれ違いがよくわかる。気の強い、多少強引にいろいろなことを決めていくような女性のラナが、事件を境に弱気になっていき、それにだんだんイラっとしてくるエマッドの感情もうまく表現されている。引っ越し先を手配してくれた男性も、ご近所の家族も親切そうな一方で怪しいと思われるところもあったりして、でもムダな話を引っ張ることもないから飽きずにいられる。エマッドが嫌がるラナの気持ちを汲まずに、やたらと復讐にこだわるのにも違和感がある。誰のために、どんな心理がそうさせるのだろうか。最後まで目が離せない。

アスガル・ファルハーディー監督は本当に才能のある監督なんだなぁ。映画「別離」も好印象だった。

asquita.hatenablog.jp