唄にギターにバイオリン。マヌーシュ・ジャズマスターTcha Limbergerが活躍するライブ映像

チャ・リンベルジェ(リンバーガー)Tcha Limbergerは、ベルギー出身のヴァイオリニストだ。おじいさまが有名なヴァイオリニスト、ピオット・リンバーガーPiotto Limbegerであり、もともとベルギーのマヌーシュ系音楽一家に生まれて音楽活動していたが、とうとう自らハンガリーに住んで、ツィガーヌのヴァイオリンを習得、さらに、自らブダペスト・ジプシー・オーケストラというグループを結成するなど、多彩に活動をみせている。
彼は自分のアイデンティティを以下のように語っている。「自分はベルギー人だが、半分がツィガーヌで、半分はフラマン人である」と。

そのチャがトリオで演奏している動画を見つけた。

ヴァイオリニストだと思っていたが、ギターも演奏して、さらには唄も歌っているではないか。しかも、ギターを弾きながら歌い、ヴァイオリンを弾きながら歌い…器用すぎる。作曲家としても活躍するチャだが、そのマルチな才能はさすがだなぁと思える演奏動画だ。

EU地域の文化祭、"Festival of Europe"でライブを行ったAngelo Debarre & Raangy Debarre

昨今起こった出来事をみるにつけ、EUの連帯なんて本当にあるのか?と穿った目で見てしまう私だが、EU諸国は連帯を保つための努力を怠っていないようにみえる。そのうちのひとつのイベントとして行われているのが、非営利団体Colour of Europeが主導して2018年で7回目を迎えるFestival of Europeだ。EU加盟国のあらゆる文化を無料で体験できる、貴重な機会となっている。
昨年のイベント宣伝動画をみると雰囲気が伝わってくるだろうか。

そして、マヌーシュ・ジャズが好きなら気が付くだろうか。この動画のBGMが途中からマヌーシュ・ジャズに変わることを。そう、イベントのプログラムを細かくみていくと、チェコのフォークダンスやらスペインのフラメンコ、ガリシア地方の音楽といった特徴的な文化に交じって、毎年フランスの音楽=マヌーシュ・ジャズということで、マヌーシュ・ジャズライブが行われているようなのだ。
なかでも豪華なのは、2016年5月に開催された第5回のイベントに招かれていたのは、あのアンジェロ・ドゥバールAngelo Debarre &ラーンギ・ドゥバールRaangy Debarre親子だろう。

動画をみていると、観客の反応がいまいち見えにくい。観客の皆さまにお伝えしたい。あなたは今、大物ミュージシャンを目の前にしているんですよ、と。これは目の前で観たかったなぁ…。

オペラ座でマヌーシュ・ジャズAngelo Debarre & Gipsy Unityが出演する"NJF sessions 2018"の魅力。

ニース・ジャズ・フェスティバル(Nice Jazz Festival - NJF)は、フランス、ニースのマセナ広場にあるヴェルドゥール劇場で7月に開催されるジャズ・フェスティバルだ。まだ出演者は確定していないようだが、今年は開催から70周年ということもあり、かなり盛り上がることが予想される。

1月から5月までの時期は、月1-2回のペースで有名なジャズ・ミュージシャンが招かれて、"NJF sessions"というイベントが行われている。Tony Allen、Shai Maestro、Tom Harrellなどのライブが予定されている。ニースに住んでいれば、もう毎月ワクワクしながら有名アーティストのライブに通うところだ。

1月は、マヌーシュ・ジャズの重鎮、アンジェロ・ドゥバールAngelo Debarreが率いるGipsy Unityと、トマ・ドュトゥロンThomas Dutroncが出演していたことがわかった。このGipsy Unityには、ブカレスト出身のバイオリニスト、マリウス・アポストルMarius Apostol、ギターにAngeloの息子ラーンギRaangy Debarreとチャボロ・ハサンTchavolo Hassan、ベースはウィリアム・ブルナールWilliam Brunardが参加している。
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ライブのリハーサル動画も見つけた。

インタビューの中で、Angeloは、オペラ座でコンサートをすることの感動を述べている。生で観たかったなぁ…。

ソウルのタクシーが大活躍。「A Taxi Driver(タクシー運転手 約束は海を越えて)」

2017年、韓国、 チャン・フン監督、택시운전사(タクシー運転者)

主人公のタクシー運転手、ソン・ガンホが演じるキム・マンソプは、シングルファザーで女の子を育てながら仕事をしている。決して恵まれている状態ではない。ある日、ドイツ人の男が光州Gwangjuに行きたがっていることを知り、高額な給料に魅力を感じて英語もできないのにその仕事を得る。ところが、光州に入る道は軍に封鎖され、ヘリも飛んでいる。実はこのドイツ人の男、Thomas Kretschmannが演じるピーターは報道記者であり、光州で起きているらしい民主化運動の取材を企んでいたのだった。
マンソプが、日々の暮らしに精一杯で、ドイツの男のことも煙たく思っているのだが、非常事態のなかで、光州の親切なタクシー運転手やデモをする大学生にふれるにつけ、どんどん気持ちが変わっていく様子がよく描かれている。さすがに、一人娘を1晩家に残したまま、ドイツ人の男をきちんと空港に送り届けるために敢えて戒厳令下の光州に戻っていく姿は、やりすぎではないか、と思ったけれども。
ストーリーは至極単純。非常にシリアスな話なのだが、登場人物が飄々としていていかにも市井の人という感じなのと、フィクション的要素が多く盛り込まれているそのおかげで楽しむことすらできる。

実話に基づく話だと映画の字幕にかかれていたので調べてみたら、1980年、本当に光州で民主化運動を軍が制圧し、かつその事実を報道統制や電話線切断で封じたというような事件があったようなのだ。そして、ユルゲン・ヒンツペーターJürgen Hinzpeterというドイツ公共放送ARDの記者が、この様子を撮影して世界に報道したことで、結果的に軍の暴力的な行動を暴き、結果的に民主化に貢献したということだ。ヒンツペーターはのちに韓国でジャーナリズムの賞も受けているようだ。もっとも、結局光州事件の真相は闇の中であり、この映画をきっかけにさらなる論争もあるようなのだが。
wedge.ismedia.jp

事実はどうであれ、報道が世論に問いかける重要性を改めて認識できた。あと、「国際市場で逢いましょう」で、主人公のお父さんの役を演じていたチョン・ジニョンがまた出演していた。 脇役なのにやたら目立つなぁ、この俳優さんは。

Half Girlfriend


Mohit Suri監督、2017年、インド

作家Chetan Bhagatによる同名小説を映画化した作品がこちらだ。
Arjun Kapoorが演じるMadhav Jha(マダヴ)は、インドのビハール州という貧しいといわれるエリアの村から、奨学金の試験を受けるためにニューデリーに出てきた。無事スポーツ奨学金を得ることができた彼だが、 Shraddha Kapoorが演じるRiya Somani(リヤ)に一目ぼれ。彼女はラジャスタンの金持ちの家の女の子で、バスケットボールという共通の話題を通じてマダヴと近くなる。リヤにほれこみ、その関係性に苦しむマダヴに対し、リヤはこういいはなつ。「私はあなたのガールフレンドではない。でも、あなたのハーフ・ガールフレンドになるわ」と。日本語でいう、「友達以上、恋人未満」というものだろうか。この二人の関係を軸にストーリーが展開していく。

リヤにほれすぎたマダヴの、別れてからの廃人っぷりに驚くが(というか、リヤもこんなに一途に愛されたら幸せだと思う)、印象に残ったのが、インド地方都市の教育事情だ。インドにはリヤのように大学まで教育を受けて好きなことをやる女の子がいる一方で、マダヴの地元のように、トイレがない故に女の子は小学校にも行けないような場所が存在するということに驚いた。映画の後半、マダヴはMSのビル・ゲイツが運営する慈善基金団体、ビル&メリンダ・ゲイツ財団にプレゼンテーションをして、母親が運営する小学校にトイレをつくるお金を獲得したり、そこで出会った女性の紹介でNYの国連本部でインターンシップをしたりする。英語は苦手だが、故郷を想う気持ちは人一倍強いマダヴを通じて、インドの事情を垣間見られる映画でもあった。

ギター片手に唄を歌うリヤの曲"Stay A Little Longer"が素敵だ。

Badrinath Ki Dulhania

 


Badrinath Ki Dulhania - Official Trailer | Karan Johar | Varun Dhawan | Alia Bhatt

2017年、米国、 Shashank Khaitan監督

 

Jhansiという町の裕福な生まれの男、Badriだが、封建的な家庭に生まれて、好きな女性との結婚も叶わなかった兄も見ているため、自分の恋愛運を恐れている。

 

そんな時にBadriは、Vaidehiに一目惚れ。Vaidehiはあまり結婚を望んでいないが、Badriに姉のKritikaの結婚相手を探すことを頼み、Badriはその約束を果たす。姉妹は2人で結婚式を挙げることになるが、Vaidehiは現れず、深く傷つくBadri。そして名誉を傷つけられ激怒するBadriの父親は、Vaideshがムンバイにいることを知ると、彼女を殺せとばかりにBadriに探しに行かせるのだった。

 

インドの女性がかなり抑圧されており、能力があっても働くことを許されていないケースが多くあることが伺える映画。Badriが好きな人が黙って去ったことが苦しくて自分を抑えきれず、かといって好きなVaideshに当たることもできずに、暴力的になるのは痛々しいし不快だった。でも、シンガポールでの束の間のダブルデートの様子は素敵だったなぁ。どうなるかと思ったが、映画としては、ハッピーエンドで良かった…!

 

Alia Bhattは前に見た作品も、元気で奔放な、強がりのお嬢さんだった。そういうキャラなのかしら。プロデューサーKaran Joharは、父親? Bhatt一族は、映画一家のようだ。

 

4Kクオリティで楽しむ、マヌーシュ・ジャズライブ。Django Memories Quartet@New Morning

4Kとは、3840x2160の解像度を持つ高解像度のことを指す。その4K解像度を使って撮影したライブ映像を見つけた。2017年10月20日に、パリのジャズクラブ、New Morningでのライブ風景を撮影したものだ。

www.newmorning.com
出演者のバンド名はDjango Memories Quartetと名付けられ、日本でも公開された映画、「永遠のジャンゴ」(エチエンヌ・コマール監督)の公開を記念して企画されたようだ。メンバーは、ギターのストーケロ・ローゼンバーグStochelo Rosenberg、ホノ・ウィンテルステインHono Winterstein、ロッキー・グリセットRocky Gresset、ヴァイオリンのマチアス・レヴィMathias Levy、それにベースがウィリアム・ブルナールWilliam Brunard。鉄板メンバーの汗が光り、目くばせや息遣いまで感じることができる映像である。
あまりにも出演者にフォーカスした映像なのでライブ映像であることが信じられないのだが、よくみるとお客さんの姿もみえる。

今年あたり、このDjango Memories Quartetのライブ映像が発売されたりするのかもしれない。いいプロモーション動画に感謝。