アイビス社の広報担当者に注目したい映画「マネーモンスター」

2016年、米国、ジョディー・フォスター監督、Money Monster

高い視聴率を誇る、財テク番組マネーモンスターは、リー・ゲイツが市場を読み解き、今投資すべきオススメの株を視聴者に紹介する番組だ。しかし、この番組で強く推奨されたある株を買ったことで全財産を失ったある男が番組をジャックする。リーに爆弾が仕掛けられたベストを着用させて…。果たしてこの状況からどうやって抜け出すか。そして、ある株が大暴落した背景には、公式発表とは異なる、ある仕掛けがあったのだった…。

こちら、あのジョディー・フォスターが監督ときいていたから一度観たかった作品だった。番組MCとして表に立つのはジョージ・クルーニー演じるリー・ゲイツだが、すべてのお膳立てや仕切り、そしてスタッフの安全確保に至るまで、有能プロデューサーのパティを演じたジュリア・ロバーツがキーパーソンである。頭が切れる役回りでまったく飾り気がなくてもカッコイイと思った。

さらに、問題を起こした当事者の企業広報女性のダイアンには注目だ。このCCO(Chief Communication Officer)は美しくてそつないが、どうも会社の中の扱いは「お嬢ちゃん」扱いで、しかも社長の愛人みたいな扱いなのがちょっと気に食わない。Corp comms先進国のアメリカでも美人広報扱いか、とちょっと失望しかけた。テレビ出演もスクリプトが準備してあって「お膳立て通りにお願いね」というところも、ちょっとどうかな…と疑問に思ったりしたのだが、最後の巻き返しがすごい。パティとタッグを組んで、自分を引き立ててくれた社長に真実を語らせるべくお膳立てをすると同時に、自身でも真実を知るべく社内調査を進めていくのだ。広報担当たるもの、やはりこうでなくっちゃ。

トレーディングシステムのアルゴリズムが暴走した理由を"due to the glitch."と一言で片付るような回答でメディアも納得してはいけないのだ。報道発表をそのまま垂れ流すメディアに対する皮肉も盛り込まれていたのではないかしら、この映画は。そして何と言っても、女性出演者が実はみんな主役として存在感がある映画だった。

とにかく主役の歌が良い! 「ベトナムの怪しい彼女」


Phan Gia Nhat Linh監督、Em la ba noi cua anh / Sweet 20、2015年

ちょっと性格のキツそうな典型的な姑おばあさん。あることがきっかけで家出をしたら、ひょんなことから20歳に若返った!? では、与えられた二回目のチャンスでどうやって人生をやり直そうか…。
主役の Miu Leさんがすでになんとなく大人っぽいというか渋い感じだったのが、違和感なくおばあさんっぽい若者を演じることができていた。第一印象はそんなにかわいいと思わなかったけれども、だんだんかわいく見えてくるのが不思議なところだ。日本でいうふせえりさんのようなコメディエンヌは、ときにオーバーすぎてToo muchなところもあるが、最後の方でベトナム戦争にかけておばあさんの過去の境遇や苦労の話をされてしまうと、どんな非道なこと生きるためには仕方なかったんだ…と思ってほろりときてしまった。そして、映画はあらゆる出演者のトホホなコメディを覆すほどの感動に変わっていくのだ。魔法にかけられた感じというか、狐につままれた感じというか。

それにしてもこの映画、ずーっと既視感があったのだが、後で気が付いた。昔、韓国版を観たことがあったんだった。予告編を観てみたが、けっこう忠実に再現されている気がした。それこそ、主役がかぶっている水泳用の帽子まで!

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こちらは怪しい彼女の4カ国比較版。中国の主役の方の顔が一番好みだな。日本の多部未華子嬢もコメディエンヌぷりがよさそうだ。

シンプルで奇想天外な話は、どんな国でも人気を博するのかもしれない。エンタメ天国の韓国、素晴らしいね。