君のためなら千回でも

カレード・ホッセイニ作品は、「千の輝く太陽」を読みたかったのに、「千」という数字に翻弄されてしてしまい、はじめにこちらを手に取ることになった。

原題は"The Kite Runner"、いわば、凧追い人、といったところか。たしかに凧も物語の重要なキーワードなのだが、日本版の映画タイトルであった「君のためなら千回でも」というタイトルは、なかなか魅力的だ。実際にこのセリフだって、物語のポイントなのだから。

意気地なしという言葉がぴったりの主人公が、時を経て、自分の犯した過ちをきちんとつぐなっていく、というストーリー。アフガニスタンの国情や人種問題が複雑に絡み合うなかで組み立てられているため、フィクションでも現実のものとして受け止めることができるのがよい。上巻では涙を誘う部分が数多くあったのは、自分の心にある、主人公と同じ「嫉妬深く」「意気地なし」で「弱虫」な何かと重なったせいか。本でこんなに泣いたのは、久々だ。

君のためなら千回でも(上巻) (ハヤカワepi文庫)

君のためなら千回でも(上巻) (ハヤカワepi文庫)