地団駄は島根で踏め

地団駄は島根で踏め (光文社新書)

地団駄は島根で踏め (光文社新書)

「うんともすんとも」の語源だといわれる「うんすんカルタ」の話をききに、熊本県は人吉市を訪ねたことがある。「語源」の視点ではなくて、あくまでもこのカルタの珍しさに注目した取材への同行だったが、歴史がベースとなった先方の話に疑問を差し挟む余地はみじんもなく、珍しいカルタを拝見させていただきながら話を鵜呑みし、きいた話はそのまま記事化と相成った。そう、通説に疑問を持つのは、けっこう難しいということだ。

この本は、語源ハンターを自負するわぐりたかし氏が、気になる言葉の語源となった土地を実際に訪問して言葉の由来となった祭りやら土地、習俗の事実確認をするという、語源訪問記だ。文章としては、どの章もある程度パターン化されており、とくに特筆すべきものはないかもしれない。しかし、調べ物はインターネットで調べがちな昨今、辞書の説明や通説を鵜呑みにせずに、その語源発祥の地で地元の人にヒアリングをかけたり、調べ物をした結果、きちんと新たなる事実を得ている。辞書の記載が必ず真実とも限らない。まさに探究心と観察眼、取材力の賜物といえよう。

なお、この本を読んで、新潟県佐渡市、「のろま」の語源である「野呂間人形」と、「二の舞を踏む」の語源となった、静岡県の「二の舞」が見たくなった。いずれも、笑えそうな演目な気がするからね。