金閣寺

金閣寺 (新潮文庫)

金閣寺 (新潮文庫)

読んだことあるんだか忘れたので、ふと手にしてみた本がこれ。若い僧・溝口の金閣寺の美しさにとらわれ、美しいそれとの距離感を縮めたり遠ざけたりしながら、自らの手でその美を消し去ろうとするまでの心の葛藤を描いたものだ。実際に1950年に起こった事件をモチーフにしているが、主人公のその後の生き方は、原作と現実では異なって描かれている。

主人公もその友人も屈折した心を抱えており、そこはなかなか感情移入できないものがある。ただ、ここにしたためられた日本語は美しい。表現が豊かだから、登場人物の、人間が誰しももつであろう卑しさの部分がいっそう引き立つのだろうか。