グラーグ57

グラーグ57〈下〉 (新潮文庫)

グラーグ57〈下〉 (新潮文庫)

グラーグ57〈上〉 (新潮文庫)

グラーグ57〈上〉 (新潮文庫)

「チャイルド 44」の続編。モスクワ、そして下巻はポーランドはブダペストに舞台を移し、主人公であるレオが屈折した家族を取り戻すためにひたすら戦う。その様子は、海外ドラマ「24」のジャック・バウアーを思いおこさせる…などといったら、本書のファンに怒られるかな。でも、文字だけで、ジャックほど銃をぶっ放さずして、これだけ壮大な物語が生まれるのだから、著者は本当に実力のある表現者なのだと思う。

レオの強靭な精神力、そして、危機の一歩寸前に状況が好転するような強い潮流に導かれながら、物語が展開していく。冒頭部分で投げかけられた数々の謎が、細かいストーリー展開の中で少しずつ解きほぐされていき、物語の終盤にはすべて明らかにされるところがとてもよい。悪役の登場人物のふとした瞬間の心のゆれや、冷酷なはずの人のちょっとしたあたたかさ、頑なな人の心がちょっと緩む時などをきちんと描いているところも、好きだ。まっとうすぎる結末は、終盤までの目まぐるしい展開を結論づけるのはふさわしいと思う。

ちなみに原題は「The Secret Speech」。物語のカギとフルシチョフの「特別報告」を意味する原題を直訳せずに、「グラーグ 57」をタイトルにしたのは、前作と紐づけるためか。今回の57は前作の44ほど関係ないと思うが、タイトルとしてはいいセンスだと思った。