累犯障害者(山本譲司)

累犯障害者 (新潮文庫)

累犯障害者 (新潮文庫)


読む本がなくてアセるなか手に取ったルポルタージュがこれ。著者は政策秘書給与の流用により実刑判決を受け服役、433日の獄中生活を送るなかで、障害を持つ受刑者が一般刑務所に服役していることや、彼らにとって一般社会よりも刑務所のほうが居心地がよいという話をきいたりしたことが、本書を著した発端らしい。

まず驚いたのは、頻繁に報道されていた"あの"事件も障害者によるものであった、ということ。そして、報道サイドも、加害者が障害者であると知った途端に敢えて加害者の報道を避けているという事実だ。
また、軽度の知的障害を持った人間こそが、往々にして社会や福祉とのつながりが途切れてしまっているということも衝撃的である。

この方が、累犯あるいは犯罪歴のある障害者とその家族も焦点を絞ってインタビューをしてきたような印象があった。人間はその家庭環境によっていろいろな育ち方をしているなか、犯罪歴のある障害者のインタビューに重きを置いたうえで、何かを結論づけるのは危険かなぁと。ことに、ある種の障害を持った方と、知能や一般常識の関連性を問う行には疑問が残る。もっと障害者全般と接点を持ちながら、これからもそこから得た知見を公表していってもらいたい。元政治家だった山本氏の行動力は目覚ましく、確実に累犯障害者の未来に貢献していらっしゃることに敬服した。