ボーン・コレクター(J.ディーヴァー著、池田真紀子訳)

ボーン・コレクター〈上〉 (文春文庫)

ボーン・コレクター〈上〉 (文春文庫)


ボーン・コレクター〈下〉 (文春文庫)

ボーン・コレクター〈下〉 (文春文庫)


元ニューヨーク市警科学捜査部長リンカーン・ライムが事件を解決するシリーズの第一弾。

こうした謎解きシリーズにお決まりの、ワケありの美女も出てきて、エピソードを盛り上げる。もっとも、リンカーンは事情があって、彼女なしでは捜査ができないのだけれども。

本作のなかで起こる犯罪も陰湿なら、リンカーンの捜査手法も、細かい証拠物件をもとにした科学捜査であり、地味なれど鮮やかといったところか。本件の犯罪者が証拠隠滅に長けているなか、その裏をかくべく現場の塵まで掃除機で吸い取り、顕微鏡で眺めながら砂粒や物質の由来を判断し、歴史と照合しながら解き明かすあたりは、ちょっと今までにないタイプの探偵小説だと思った。ただ、作品解説に説明されるスピード感を、この本に思ったほど感じなかったのは、私だけか。