アンリ・カルティエ=ブレッソン 瞬間の記憶(Biographie d'un regard)


2003年、Heinz Butler(ハインツ・バトラー)監督作品。

カルティエ=ブレッソン本人、そして友人や被写体となった人々が出てきて、写真を撮ることについて、また自分の作品について語っていく姿を捉えたのが、この映像作品だ。私がカルティエ=ブレッソンの写真展を見たことを知った人にお借りした。スペシャル・エディションならではの素敵な装丁で、パッケージだけでもすでに楽しい。

彼の作品の数々は、よく言われているように瞬間の芸術であるが、その瞬間をとらえるためには観察力が欠かせないことが伝わる。それどころか、「観察力だけでいい写真が撮れる」、とまで本人はいっている。そして、何を切り取るのかを一瞬で考えられる能力が、だれにもまねできない、あの作品群に結びつくのだと思った。昔、ボタン押せば写せることを考えれば、絵画のほうが写真なんかよりよほど大変な技術じゃないか、なんて思っていたが、とんでもない誤解だったよなぁと改めて思う。

どの写真も印象的だけれども、なんとなく、マリリン・モンローのポートレートが心に残った。カルティエ=ブレッソンが撮影した彼女は、アイコン化されたセクシー女優の姿ではなく、ただ美しく品のいい一人の女性として、自然な表情で写っていたから。

彼にこの写真集付きDVDを返す前に、ひとつ言葉をメモしておこうっと。
"Photographier: C'est mettre sur la même ligne de mire la tête, l'oeil et le coeur. C'est une façon de vivre."
「写真を撮ること、それは、同じ照準線上に頭、目、心を合わせること。つまり、生き方だ。」
けだし名言。