勘九郎ひとりがたり(中村勘九郎)

勘九郎ひとりがたり (集英社文庫)

勘九郎ひとりがたり (集英社文庫)


当時は勘九郎、現中村勘三郎がまだ30代後半くらいのときの、連載シリーズ第二弾。勘三郎(当時)の家族や歌舞伎の舞台裏、役者の構えなどについてまとめたもの。いかにも口述したものを編集者が筆記したっぽい書きっぷりなんだが、勘三郎の著となっているのが謎。タイトルどおり、彼自身の語りなのかな。ま、本人らしさが出ているから、どちらでもいいか。

居眠りしているのにいつも最前列にいるお客さんに公の著で悪態をついたら、御本人から手紙を貰ってしまい、役者のおごりと反省したり、釣女の醜女を演じたら引っ込みで拍手が出て戸惑ったものの、祖父の六代目菊五郎も同じ役、同じ場面で同じ拍手が出たと知り喜んだり。掛け声への思いや、金比羅歌舞伎をはじめたきっかけから、素敵なお客さんの話。裏話じみた話のなかにも、役者ならではの気遣いや心意気が垣間見られるのもいい。さらに語りはべらんめえ。

歌舞伎、能、狂言ともに色んなご縁があってたくさん観る機会があったが、いつもその場限りの楽しみだった。実家に大量の本があることだし、しばらく読み進めてみようかな。勉強こそが、一段上の楽しみにつながると、この本にも書いてあったしね。