よいクマ わるいクマ 見分け方から付き合い方まで(萱野茂、前田菜穂子、著)

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軽井沢のこのエリアでは、ここ数日、人里にまでクマが降りてきたとかで、ちょっと警戒モードである。そこで、友人宅に置かれていた、アイヌ人初の国会議員であり、北海道の二風谷にアイヌの資料館を開館したことでも知られる、故・萱野茂氏とヒグマ博物館の学芸員である前田菜穂子氏、二人のエキスパートによるクマの本を読んでみた。

ただの実践本を超えた、マニアックな本だ。さらに、北海道の先住民であるアイヌ民族の英知と、学術面の両方からクマを学ぼうとする内容。読み手をだれに据えているのかいまいちわからないが、相当専門的な内容なのに一般人にもおもしろい。

アイヌ民族は、クマの種類として、山の神様=キムンカムイと、悪い神様=ウェンカムイというふうに分類しており、いわゆるイヨマンテという熊送りの行事で感謝しているのが、毛皮と肉、それに薬となる胆嚢をかかえて来てくれる、キムンカムイのクマらしい。悪いクマは、人間の味を知っておそってくるクマだ。そして、彼らの伝承民話の中には、クマの細かい習性とやってはいけないこと、正しい対処法が盛り込まれているというわけ。そんな話が囲み記事で盛り込まれているから、この本がおもしろいのかもしれない。

海外におけるクマ対策の話も紹介されているが、アラスカのとある国立公園では、訪問者がクマ研修を受けてからでないと、公園内にも立ち入れないとか。つまり、遭遇した際に命を守るためにも、それだけ正しい対応が求められる動物、それがクマなのだ。

クマに会ったら死んだふり・・・としか思っていなかったが、実際は、まず出逢わないように笛やら何やら、音を立てながら遭遇しないように気を配ったり、クマが人間エリアに降りてこないように人間の残飯やペットフートを放置したり、荷物を床に置いたりしてはいけない。また、出会ってしまったとしても、決して逃げず、背中もみせず、奪われた荷物を奪い返したりしてはいけない…などなど。クマへの正しい対処法は奥深いということがよくわかった。