新春名作狂言の会@新宿文化センター大ホール


もう14回目となるらしい、表題の恒例イベントに行ってきた。東西それぞれのスタイルの狂言を一気に観られる上に、和泉流野村萬斎大蔵流の茂山千三郎が直々に解説をしてくれるというゼイタクさ。それに、和泉流は何度か観たことがあったが、大倉流の茂山家の狂言は一度観てみたかったのだ。
まずは二人のトークを30分ほど楽しんだ。狂言の家に生まれた者ならではの数々のエピソードが楽しい。また、演目は忘れたが、西と東で、(あるいは家によって)こんなに違うんだぞということを示すために、同じ曲を二人が同時に舞うといった試みもよかった。
次に、茂山千五郎、茂山七五三(しめ)、茂山千三郎による「附子(ぶす)」。千五郎・七五三のかなりトボけた太郎冠者/次郎冠者ぷりが、腹立たしいほどのおかしみを醸しだす。「あおげーあおげー」「あおぐぞーあおぐぞ」のやり取りもたのしければ、最後に二人が、大して反省していないくせに、主人の前で「毒を飲んで死のうとしたが死に切れない」といったようなことを歌いながら舞う姿なんて、もうおかしくておかしくて。誰でも知っている正攻法もコメディが、演者のふるまいでさらに笑いが増すなんて、本当にすごいよな。
最後は、野村万作野村萬斎、石田幸雄による「花折」。新発意(しんぼち=出家したばかりの見習い僧)が禁を破って大変…という展開は、ある意味「附子(ぶす)」に通じることはあるが、話の展開により細やかさを感じた。萬斎演じる新発意のコメディアンっぷりもさることながら、石田幸雄も存在感があってとてもよい。さらに、万作の品格といったら!所作からして違う。
それぞれの流派のよさを発見できる、よいイベントだった。