イザベラ・バードの日本紀行(イザベラ・バード著、時岡敬子訳)

イザベラ・バードの日本紀行 (上) (講談社学術文庫 1871)

イザベラ・バードの日本紀行 (上) (講談社学術文庫 1871)


イザベラ・バードの日本紀行 (下) (講談社学術文庫 1872)

イザベラ・バードの日本紀行 (下) (講談社学術文庫 1872)


明治初期に、英国女性が通訳の男性・伊藤を一人連れて、北日本を旅した時の様子を書簡形式で記したのがこの本だ。まだ文明化が地方都市にまで行き渡っていない当時の様子がとても興味深い。
彼女の眼からみた当時の日本人はとても器量が悪かったようだが(笑。ただし、名門の日本人にはたまに器量のよいのものいたと書かれていた)、一方で子供にまでしっかりとしつけが行き届いていて、野次馬に至るまで礼儀が正しく、囚人に至るまで人相が本当によろしくない人が少ないような、そんな国だということがわかる。
立場的に上流階級のパーティーなどにも出る機会が多かったようだが、そんななか外務大輔の森有礼の、まあたぶん英国にかぶれまくったパーティーを「午後をこんなふうにむだにすごした」などと表現したり、アーネスト・サトウ氏主催の趣味の良さを褒めたり、アイヌを「未開人」といいながらもその物腰や品位の高さを評価するなど、自分が対峙する人の立場を気にせず、かなり正直な印象を記しているところがおもしろい。
英国製のソーダ水(だっけ?)か何かのボトルに、まったく別の危ない水分を入れて売るようなところは、まさにちょっと前の東南アジア諸国で実際みた風景だったりする。当時の日本を追体験できる貴重な紀行文だと思った。また読みなおすと新たな発見があるかも。