百万円と苦虫女


(2008年、日本、監督・脚本 タナダユキ
蒼井優演じるフリーター鈴子はなんだかどうにもツイていないことばかり。ひょんなことから実家を出て、フリーターをしながら100万円がたまったら次の場所に移動する…というのを繰り返し、そこでの出会いや、頭がいいのにいじめに遭うなどの受難がある弟との文通を通じて、彼女が少しずつ変化していくさまを描く。
蒼井優がそもそもかわいい。そして、演技というよりは自然体な感じがよい。なるべく人にかかわらないように生きていたいのに、なぜか行く先々で目を付けられてしまうのは気の毒だが、100万というメモリでするっと去り時を見つけていくさまは、小気味よい。鈴子は何か強い人間のようにみえるのだが、みていくうちに、決してそうではないことに気が付く。要は、人とかかわるのが怖いんだろうな。わかる気がする。この彼女も、言いたいことを言わずにいることで、トラブルなく過ごそうとしていたが、何も言えない関係になってしまったことに苦しみ、好きな相手に別れを告げる。実はその相手も、言いたいことがストレートにいえないがゆえに、回りくどい手法でより長く彼女と過ごそうとした挙句、肝心なことが伝わらずに裏目に出てしまったのだが。悲しいすれ違い。でももしかしたら、鈴子も次こそはほかの人とうまく関係が築けるかもしれない。そんな希望を持たせてくれる映画でもある。