ジプシーキャラバン


(2006年、米、WHEN THE ROAD BENDS: TALES OF A GYPSY CARAVAN、ジャスミン・デラル監督) 
ジプシー、最近はロマと呼ばれたりする人々をルーツに持つ5組のミュージシャンたちによる米国横断ツアー“ジプシー・キャラバン・ツアー”の模様を追ったドキュメンタリー映画。
映画冒頭に出てくるロマの言い伝えにあるように、まさに「まっすぐな道がないときは曲がった道を 歩むしかない」、そんな人生を歩んだ人たちの集合体だ。
スペインからは「アントニオ・エル・ピパ・フラメンコ・アンサンブル」、ルーマニアからは「タラフ・ドゥ・ハイドゥークス」と「ファンファーレ・チォクルリーア」マケドニアからは「エスマ」、インドからは「マハラジャ」。各グループのコアメンバーの故郷にまで取材に行き、その人となり、暮らしを紹介するとともに、ルーツは同じはずなのに見かけも、そして音楽や演奏スタイルも異なるこの5グループのメンバーが、6週間のツアーを通じて互いを理解し、仲良くなっていく様子もうまく捉えている。
どの人もエピソードに事欠かないし、印象的な人物も多数登場する。たとえば、ジプシー・クイーンの称号をもらった女性歌手エスマは、実はガッジョ(非ロマ)で作曲家の男性と結婚して、苦労したとか。フラメンコの女性、メインダンサーの叔母にあたるファナは、音楽の魔力を意味する「ドゥエンデ」について力強く語る。この人、普段は普通の、そして体格のいい年配の女性なのに、これが歌ったり踊ったりすると、たとえ衣装を着ていなくても急にものすごい魅力をまとってくるから不思議だ。そして、マハラジャのメンバーでダンサーのハリシュ。これまた苦労人の生い立ちで、かつ芸術一家ではなく大工のカーストから女形ダンサーになったとか。独学で学んだ膝で回るダンスは必見だ。ルーマニア系のミュージシャンたちは、すでに本も読んだし映画も見たので、そこまで新鮮さはなかったのは私の事情だ。ただ、タラフのおじいさんバイオリニスト、ニコラエのセリフが妙に頭に残っている「若いうちでないと人生の重みは背負って歩けない」と。そう、だから若いうちに苦労はしておいた方がいいんだよな…。
この映画、かなりディープなジプシー音楽が満載ななか、さすがに私も既知のミュージシャンであるルーマニア勢の音楽しかわからないと思っていたが、1曲だけ、ルーマニアのグループ以外の音楽で、思い当たるものがあった。
マハラジャの演奏の中で、結婚式に相手の女性が来なかった男のために、友人の男性が花嫁のふりをして女装をして踊る…というのがあったと思うが、あの曲に思い当たる節があるのだ。Aishwarya Rai主演のインド映画でも使われていた曲だと思うのだが、一体どうやって調べればいいのだろうか。

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