お茶漬けの味


1952年、小津安二郎監督、日本

お手伝いさんのいるような上流階級の佐竹家だが、美しく育ちの良い奥様と異なり、夫は地方都市出身の会社員だ。妻は夫をあまり快く思っておらず、鈍感なことをいいことに、姪っ子の節子や友人のあやたちと遊び歩いてばかり。夫をコケにしている。そんな夫もとくに妻の勝手な言動に口出しはしていない。
ところがあることが原因で二人はぶつかり、まずます気まずい事態に。そして、夫の海外出張をきっかけに、2人の関係に変化が現れるのであった。
お借りしたDVDでこの映画を見た。大して期待というか、そんなに好きな映画だという意識をしないで観たら、これはよかったなぁ。来てるお着物のセンスは素晴らしくいいものの、はじめはとても感じが悪かった佐竹家のマダム(木暮実千代が演じている)が、最後はみるみるうちに魅力的になっていく。2人でお茶漬けを作るためにしのびこむ台所のシーン、そして、2人の食事シーンがとてもいい。
この作品は、男性よりも女性の華やかさに目がいくのだが、なかでもあやを演じている淡島千景の美しさがすごく好きだ。かつて宝塚だった立場を存分に生かして、「すみれの花の咲く頃」という、宝塚で必ず歌われる歌など歌っているところが印象的だ。もちろん声も美しい。なお、そのシーンでは4人の美しい女性がお揃いの旅館の浴衣をきているのだけれど、その衣装がまた何ともモダンでおしゃれなのだ。着物の柄はもちろん、障子にうつる影など、日本の暮らしの美しさを存分に感じる映画でもある。

お茶漬の味 [DVD]

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