しあわせはどこにある


Hector and the Search for Happiness, 2014年、ピーター・チェルソム監督

精神科医のヘクターは、美しいパートナー、クララとロンドンで幸せな日々を送っている。でも日々色々な患者を診るうちに、本当の幸せが何なのか、疑問を持つようになる。そこで決めたのが、「The Search for Happiness」、つまり幸せ探しの旅だ。愛する彼女がプレゼントしてくれた、ノートを片手に。

まず向かったのが、上海だ。飛行機で知り合った、大金持ちのビジネスマンの計らいで、豪遊する。観光学部の学生と名乗る美女イン・リーと知り合い、幸せな気分を味わうが、実はここにトラップも。ヘクター、出遭った段階で気が付くでしょう…。でも、華やかで豊かそうにみえる彼女も、「自分の人生が家族や故郷に誇れるものではない」という意味で、お金はないが故郷に帰って家族に会える人たちとは違う。どちらが幸せなのか。

チベット。「苦難の人生なのになぜ幸せなのか」と問いかける僧。強風で色とりどりの旗がはためくなか、その強風と晴天を僧たちが喜ぶ姿が美しい。もうその風景が幸せの象徴だ。

次はアフリカ(のどこだ!)。オンボロ飛行機に乗って、いい出会いもしつつ、地元で医療活動を続ける元同級生を手伝いに行く。彼は、愛するパートナーがいるからこの仕事を続けられるのだ、という。一方で、「幸せ? ほしければ奪え」というマフィアのボスの言葉の印象的だ。ありえないくらい恐ろしい現実があるからこそ、家族や食事、音楽といったありふれた幸せに満足ができるのかな。

最後に向かったのは、ヘクターの昔の彼女、アグネスの暮らしているLA。彼女にはすでに幸せのパートナーがおり、思い出に浸っているだけのヘクターに対し、アグネスはお説教をする。それでもかつての学生時代の仲間。いいたいことをいった後は、幸福学のアインシュタインと呼ばれるコアマン教授の講義を聴きに向かう2人。彼は、幸せ探しはほどほどにすべき、と生徒を諭し、「他のことをすれば副作用で幸福感が得られる」という。さらに、幸せを可視化するために脳の分泌物を調べる装置も開発していた。アグネスとヘクターはその装置の実験台に。そしてついに、本当の幸せにたどり着くのであった…。

ヘクターが手帳に書きつけた、幸せに対する考察はこんな感じ。

1. Making comparisons can spoil your happiness.(幸せは比較すると台無しになる。)

2. A lot of people think happiness means being richer ar more important.(幸せとは、金持ちになったり偉くなることだと思われている。)

3. Many people only see hapiness in their future.(多くの人は幸せを未来にのみ見出す。)

4. Happiness could be the freedom to love more than one woman at the same time.
(幸せとは、一人以上の女性を愛せることかもしれない。同時に。)

5. Sometimes happiness is not knowing the whole story. (幸せはときとしてすべてを知り過ぎないことかもしれない)。

6. Avoiding unhappiness is not the road to happiness.(不幸を避けるのが幸福への道ではない。)

7. Does this person bring you predominantly a. up b. down? (この人物は私の心をa)上げるのか b)下げるのか)?

8. Happiness is answering your calling. (幸せとは、天職につくこと)

9. Happiness is being loved for who you are. (幸せとは、ありのままの姿で愛されること。)

10. Sweet Potato Stew! (サツマイモのシチュー!)ってわけわからないだろうが、これは、要は大勢の愛すべき人と食べる、最高においしいご飯、ということか。

11. Fear is an impediment to happiness. (恐怖は幸せの障害となる。)

12. Happiness is feeling completely alive. (幸せとは、心底生きているという実感を味わうこと!)

13. Happiness is knowing how to celebrate. (幸せとは盛大に祝うこと。)

14. Listening is loving. (話をきくことは愛を示すこと。)

15. Nostalgia is not what it used to be. (過去は懐かしいが、戻らない。)

We all have an obligation to be happy! みんな幸せになる義務がある!

幸せ、は結局特別な人、という感じがしたな。たまにはこういうことを考えるのもいい。「旅」ということにひっかけて色々な風景を見ることができることもあり、何度も見返してしまいたくなる映画。