「花の降る午後」~宮本輝作品はすぐに没頭できるものばかり。

花の降る午後 (角川文庫)

花の降る午後 (角川文庫)

宮本輝さんの作品はだいぶ昔に人に勧められて、「錦繍」「オレンジの壺」を読んだくらいだった。いずれの本も当時はかなり集中して読んだ記憶がある。今日、たまたま実家の本棚にあった「花の降る午後」を何気なく手にとって読んでいたら、そのままページをめくる手が止められなくなり、そのまま3時間あっという間に読み切った。

舞台は、神戸のフレンチレストラン「アヴィニヨン」。亡くなった夫、義直と義母の意思を次いで、このレストランを切り盛りする女性、甲斐典子が主人公だ。レストランは、フランスで修行経験のある加賀シェフ、レストランで長く経理等の仕事をしている葉山をはじめとした、気の置けない店員たちで成り立っている。加賀の料理を目当てに、多くのお客様が訪れる人気のお店だ。
「白い家」は、典子の夫が生前に購入してくれた絵画だ。ある日、この作品を描いた画家、高見雅道がお店を訪ねてきて、「個展をひらくので、この絵を貸してほしい」という。その絵を貸したことがきっかけとなり、生前の夫から典子に宛てたメッセージが見つかり、ここからドラマがはじまる。隣人や典子と接点がある人がやたら国際的なのが印象的。そして、典子の恋や店の所有権の行方等が大きく変化していくのだ。
もちろん小説だし、こんな展開あるわけないじゃない!とにわか信じられないが、なぜだろう、読ませるのだ。ついつい夢中になってしまう…。「宮本輝は一度読み始めたらやめられない」という私の思い込みは、いっそう強まったのであった。