Toilet - Ek Prem Katha。「たかがトイレ、されどトイレ」の権利を勝ち取った女たちの物語。


2017年、インド、 Ek Prem Katha、Shree Narayan Singh監督

シンガポール航空に乗ると、機内エンタメプログラムにインド映画の選択肢が豊富すぎてテンションがアがる。インド映画が2-3しか紹介されていない日系航空会社とは大違いだ。(もちろん、インド映画に飛びつく人なんてレアなので、日経航空会社の機内エンタメの選択肢は間違ってはいないと思う。)


数多ある選択肢からこの映画を選んだ理由は、アクシャイ・クマールAkshay Kumarが主演だったことと、「コメディ」に分類されていたことだった。インド映画の重たいものはむごすぎる殺人事件や悪徳警察官が出てきて善人の暮らしが脅かされたり、なかなかシビアなので、楽しい気分になりたかったのだ。でもこの映画、インドの社会問題をとらえた、実話に基づく素晴らしい映画だった。

アクシャイが演じる主人公、Keshavの人生は、迷信深い父親、Panditjiに惑わされてばかり。おかげで黒い水牛と結婚させられる始末だ。そんななか、KeshayはJayaというインテリで行動力ある女性と出会い、惹かれていく。ストーキングまがいの尾行に盗撮と、多少強引な方法でKeshayは無事にJayaの心をつかみ、迷信深い父親のある条件もうまくかわして結婚にこぎつける。

ところが、結婚式を終えたのち、Jayaは家にトイレがないことに気が付く。なんでも村の女性は、「LOTA Party」にJayaを誘うのだが、これはまさに「家に女性が使えるトイレがないので、夜明け前にみんなで森のはずれにいき、そこで排便(defecate)する」というのだ。Jayaはこのことに反発、Keshayも、さまざまな方法で愛する妻のためにトイレを用意しようとするのだが、当座の対策が長続きするはずもなく、とうとうJayaは離婚を申し立てる。さて、どうなるのか。

問題解決に奮闘するKeshayがすごい。そして、Jayaの家の教育方針"Speak up"ということで、Jayaのトイレに対する戦いを温かく見守る父親が光っている。そして、旧態依然としたKeshayの父や祖母、村の長老たちの、女性用トイレづくりに対する反発がすごい。「文化への冒涜」とか「衛生的ではない」とか。男性はトイレで排便しているというのに、女性のトイレは不潔とはどういう了見か。さらに、それでも足の悪い老婆のためには室内トイレをしつらえている、というのがまたよくわからない…。
とにかく、メディアも巻き込んだJayaとkeshayの戦いっぷりに、今までLOTA Partyを当たり前だと思っていた村人も、はじめはJayaたちに反発するも、だんだんそのおかしさ、そして男性はトイレで排便ができるのに女性だけできないという事実に気が付き、ともに声を上げていくのだ。
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それにしてもインド…すごい国だな…。