マヌーシュ・ジャズの軌跡を学術的にたどるイベント。"Introduction au jazz manouche, autour de Django Reinhardt"

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フランス、パリのシャンゼリゼ通りの先のいわゆるラウンドアバウト(環状交差点)のところにある劇場、その名も「ロン・ポワン劇場(Theatre du Rond Point)。ここで今年面白いイベントがあったようだ。"Nos disques sont rayés"(傷つけられた私たちのディスク(レコード)-直訳)というフェスティバルで、第三回目のシーズンでは、都会の辺境、というようなことをテーマにさまざまなイベントが開催されたらしい。
www.theatredurondpoint.fr


辺境、移民、郊外…とくれば、「マヌーシュ」だって辺境の問題のひとつだろう。というわけで、このイベントでは、ジャンゴ・ラインハルトの孫、ダヴィド・ラインハルト(David Reinhardt)と、彼の15年来の友人でもあり、マヌーシュの血を引く有名ギタリスト、マチュー・シャトレン (Mathieu Chatelain)が、マヌーシュの起源や歴史、なぜフランスにわたってきて、ジャンゴはどのように音楽に寄り添い、マヌーシュ・ジャズというスタイルを紡ぎだしたかを語る、という大変素敵なイベントだった模様だ。

イベントは2019年2月9日に行われたらしく、イベントの動画を発見した。

マヌーシュ(ジタン、ロマ)で使われる単語の話や、グラッペリとジャンゴの出会いの話、第二次世界大戦の際に強制収容所に送られた話、ヨーロッパのジタンたちの文化や言葉がどのようにはく奪されていったか、ビバップとマヌーシュ・ジャズの関係まで、いいことから悪いことまで、幅広く語られるので、非常に勉強になる。そして、その音楽の発展は、凄腕ギタリストたちの生演奏とともに語られるのだ。戦後となる1959年、ビバップ時代にMiles Davisの名曲"So What"が一世を風靡したが、これは、いわゆるジャズ・モダールと呼ばれる、いわゆるコード進行よりもモード (旋法)を用いて演奏されるジャズ。それより20年以上前に、ジャンゴ・ラインハルトは”Appel Indirect"で同じ手法で曲を作っているというのだ。
おお、確かに!

フランスでは何かと差別されがちなマヌーシュの素晴らしい音楽文化がより多くの人に広がるといいなぁ。