ジャンゴ・ラインハルト伝〜ジャンゴ わが兄弟(シャルル・ドゥローネ著、平野徹訳)

ジャンゴ・ラインハルト伝---ジャンゴ わが兄弟

ジャンゴ・ラインハルト伝---ジャンゴ わが兄弟


先日読んだばかりの「ジャンゴ・ラインハルトの伝説」は、ジャンゴに詳しい著者が、当時のあらゆる資料や当事者の証言を元に著したものであった。一方、この本の著者であるシャルル・ドゥローネ(Charles Delaunay)氏は、実際に生前のジャンゴと接し、レコーディングセッションに立ち会ったりしていた張本人である。ジャンゴとかかわりのあった人々の思い出や逸話などを集めたものである、という点において、「ジャンゴ・ラインハルトの伝説」と本書は似通っているといえるが、(実際に、かぶっている話も多い)、ジャンゴ本人を知っている著者が書いた本作は、逸話や思い出の加工方法が淡々としていて、結果的により現実のジャンゴに近い人物像が描き出されているのではないかと思った。フランスを舞台にして活躍した人の話が、フランス語→日本語に直接翻訳されているため、とくに固有名詞のカタカナ表記方法に迷いがなくて、読みやすい。

内容がコンパクトにまとまっているため、手っ取り早くジャンゴの生涯や人となりを知るにはうってつけだろう。なお、本文中に曲名が出てくることが少ない代わりに、ディスコグラフィにフィルモグラフィまで付いている。きっとマニアックな人は、ディスコグラフィを眺めながらほくそ笑むんだろう。

ちなみに今朝、通勤電車でこの本を読んでいたら、押されたはずみで本の側面に口紅を付けてしまった。普段口紅なんてしないのに、なんでたまに付けた時にこういうことになるのか。まあ、もともと古本屋に売る予定はないので構わないのだけれども、買って1週間ちょっとしか経っていない本を汚すのは、少し哀しいぞ。