困ります、ファインマンさん(R.ファインマン著、大貫昌子訳)

困ります、ファインマンさん (岩波現代文庫)

困ります、ファインマンさん (岩波現代文庫)


理論物理学者であり、1965年にはノーベル物理学賞を受賞したリチャード・ファインマンによるエッセイ。本当は、シリーズ一作目の「ご冗談でしょう、ファインマンさん」から手をつけたかったのだけれども、ある日、本を持っていない日にふらっと入った本屋には、こちらしかなかったのだからしょうがない。エッセイがいろいろ入っている本だから、何から読もうと関係ないかと思って、前々から興味のあったファインマンさんの世界に足を踏み入れたわけだ。

帯にも「痛快エッセイ」とかいてあるし、軽い読み口のものを想像していたが、1話目に収録されているのは泣ける話であった。後半は、チャレンジャー事故調査委員会の一員となった氏が、ファインマン流の探究心で事故原因究明を行い、組織に向き合っていくさまが描かれている。事故原因を専門家の観点から図解で分析しているため、科学に明るい人や宇宙開発に興味がある人にもおもしろく読める話となっている。

ファインマンさんは、子供の頃から、すばらしき教育者であるご両親のもとで育っており、そのご両親がファンマンさんの好奇心とユーモアセンスを育てたのだな、ということがよくわかる。そして、長いものに巻かれることなく、疑念は徹底的に科学の力で解明し、ユーモアを加えて説明しようとするその姿勢は痛快ですな。