歌川国芳 奇と笑いの木版画 @府中市美術館


江戸後期の浮世絵画家、歌川国芳の作品を、彼がデビューした19歳頃の作品から円熟期までをみるという、豪華な企画展に行った。なんでも一個人の所蔵品を一挙公開とかで、前期・後期で違う作品が見られるらしい。

国芳ってだまし絵と春画というイメージがあったのだけれども(失礼)、いやはや、その発想力が素晴らしい。若いころの作品は、うまさと硬さが目立つ、役者絵は美人画などが中心だったのが、どんどん独創性を発揮しはじめるのだ。なかでも印象的だったのは、「心学稚絵得」シリーズの、福と寿の相撲、というもの。七福神のなかで見覚えのある2人が、なぜか掴み合いのけんかをしていて、笑える。あとは、役者絵が贅沢だということで禁じられたからということで、魚のバディに役者絵をはめた「魚の心」「仮名手本忠臣蔵」をガマガエルで表現した「蝦蟇手本ひやうきんくら」のような作品もおもしろかった。役者の顔をはめたこの魚の絵なんて、シーマンみたいで笑える。

なかでも、江戸幕府による「天保の改革」にて娯楽が弾圧された時に発揮された、彼の作品には舌をまく。さらっと風刺したり、かたいモチーフに娯楽を忍ばせたり、色っぽい絵にクソマジメで道徳的なタイトルを付けてみたり。

最近、ネット規制の問題で、作家たちが「表現の自由が損なわれる」なんて声明を出したりしているのを見掛ける。もちろん、表現の自由は大事だけれども、国芳の作品をみていると、プロならば、どんな逆境にもめげずに、文句言う前に新たな発想を生み出す原動力にして成長すべきなんじゃないか、なんて思ったりするのだ。