雨天炎天〜ギリシャ・トルコ辺境紀行(村上春樹、著)

雨天炎天―ギリシャ・トルコ辺境紀行 (新潮文庫)

雨天炎天―ギリシャ・トルコ辺境紀行 (新潮文庫)


昔、この本を読んだ時の読後感があまり好きじゃなかった。ギリシャやトルコをバカにしやがって、嫌なことがあったとしても、国の文化に対する愛情がないよ!と思ったのだ。でも改めて読み直したら、全然そんなことなかった。

話は、1988年に村上氏がカメラマンの松村映三氏とともに行ったギリシャおよびトルコの旅行記である。ギリシャじゃアトス半島で、貧しくかつ似通った食事を与えられながら修道院を巡る巡礼体験をする。トルコ編では、羊肉が嫌いな2人がトルコを旅して、ときにその食生活にヘキエキしたりするのだが、一方でいい人にも出会ったり、面倒になって人懐っこい人を適当にあしらったり、絨毯を買ったり、チャイとともにおしゃべりしたり。一旅行者として、トルコのいろんな文化や出会いを客観的にみて、自分なりの解釈を試みているようだ。一般目線なところが好感が持てる。というか、なぜ昔この本に大して、あんな嫌悪感を抱いたのか、今となってはもうわからない。

訪問するトルコがマニアックすぎて、きっと旅の参考にはならない。イスタンブールカッパドキアの話なんてほとんど載っていないからね。ただ、トルコ文化の本質は、どこの地域でも垣間見ることができるから、楽しめる。「チャイはチャイの味であり、紅茶の味とは違う」という、そんな記述なんかにも妙に納得したりして。