マイクロソフトでは出会えなかった転職(ジョン・ウッド著、矢羽野薫、訳)

マイクロソフトでは出会えなかった天職 僕はこうして社会起業家になった

マイクロソフトでは出会えなかった天職 僕はこうして社会起業家になった


マイクロソフトのエグゼクティブとしてアジアを担当し、多忙を極めていた著者が、ネパールでのトレッキング旅行で得た出会いをきっかけに、現職の地位を捨ててNPO"ルーム・トゥー・リード"を立ち上げ、軌道に乗せるまでの軌跡を描いた本。アグレッシブに資金をがんがん獲得し、MSのマーケティング手法とスピード感や決断力を以て、掲げた数値目標どおりに図書館をがんがん立ち上げていく様は読んでいて爽快ですらある。

もっとも、このプロジェクトは「英語圏人の彼らだからこそ、歓迎されたプロジェクトでもある」とは思う。日本でも絵本を集めて途上国に送るようなNGOがあるが、現地語で翻訳を付けるなど、苦労を重ねている。英語が世界英語として出世のための道具となりうるからこそ、RTRは幅広く受け入れられ、浸透したように思う。あとは、JW氏のエグゼクティブとしての、MBAホルダーとしての人脈も。ただ、何にせよ、その恵まれた環境をがっつり活かしてNPOの規模を拡大していくその手腕は、素晴らしい。

この団体は、NPOマイクロソフトを目指して、彼らは「結果重視の姿勢」、つまり、やってきたことをきちんと数値で示し、継続的に公表してきた。また、「個人を攻撃していはいけないが、アイデアは攻撃してもよい」という姿勢、「情熱があって、具体的な数字に基づくこと」、そして「部下に対する忠誠心」、きちんと部下や同僚のことを把握し、それについて気を回すことなど。ま、NPOに限らず企業経営にとって大事なことだが、こういうことができているNPOって少ないと思う。

そして何よりもすごいと思ったのは、本の最後にある「謝辞」だ。寄付に頼るNPOこそ、謝辞は絶対に怠ってはならない。自分たちがいいことをしている、ということに自惚れ、寄付者への感謝を忘れがちだが、6Pにわたる心のこもった謝辞こそが、今後の活動をさらに円滑にするに違いないのだ。