沖で待つ(絲山秋子、著)

沖で待つ (文春文庫)

沖で待つ (文春文庫)


芥川賞受賞作なんていくことを全然知らずに、この本を読んだ。この単行本には短編が3作おさめられているが、いずれも「仕事」に関する描写が妙にリアルだったり、アラフォー女の毒が余すところなく出ていたり、子供向けなのに書いているのかと思いきや、大人のドロドロした世界が妙に細かく書かれているところがおもしろい。

「沖で待つ」は、絲山氏の会社員時代の経験をふんだんに盛り込みながら、「同期」というカテゴリで共に過ごす仲間同士の関係性を描いたもの。淡々とした日常に訪れた、少しのファンタジーというところか。人の命にかかわる話なのにその哀しみに寄りかからないところがいい。

ただ、本当に男女の同期ってただの友情で終わるのかな。ここまで仲良くても…?なんてちょっと思ったりした。まあ、そんなことも含めて、予想外の方向にいくあたりが、この物語の個性になっているのかも。

ちなみに、絲山秋子 -OfficialWebSite-は彼女の個性が出ていておもしろい。とくに、読者からの150ばかりのインタビューへの回答が羅列してあるページ…。「好きな映画」を問われて、唯一持っているDVDが「ヒーロー・イン・チロル」だと回答しているのをみて親しみがわいた。これ、相当おもしろいオバカ映画で、けっこう好きなのだ。