イビサ(村上龍、著)

イビサ (講談社文庫)

イビサ (講談社文庫)


日本人の女の子マチコの破天荒で破滅的な物語。彼女は特殊なコミュニケーション能力を用いて周りを巻き込みながら、パリや南仏、タンジールを旅する。でも、だからといって普通の旅行記的な話ではないのだ。
思いがけないあらゆる種類の淫靡さが表現されていて、途中で話の内容に付いていけなくなった(笑)。こういう官能的な表現の豊かさもまた才能なんだろうな。
この本を読んだきっかけは、去年会った、パリ在住で日本食料理屋を経営していたという日本人のTさんが、この本の中に実名で登場するときいたからだ。「ピガールにある、お洒落な人々に人気の日本食レストラン」ということで、なるほど、けっこう細かく書いてある…。こんな虚構だらけ(だと思われる)の物語の中で、登場するレストランの描写がリアルだというのも、このレストランのオーナーにしてみれば、複雑な気持ちに違いない。ましてや、オーナーさん、少しだけだが、物語の登場人物にもなっているし。
ところで、村上龍の本って今はなかなか書店には置いていないのかな。この本を探すのにけっこう苦労してしまった。