夜想曲集〜音楽と夕暮れをめぐる5つの物語(カズオ・イシグロ著、土屋政雄訳)

夜想曲集: 音楽と夕暮れをめぐる五つの物語 (ハヤカワepi文庫)

夜想曲集: 音楽と夕暮れをめぐる五つの物語 (ハヤカワepi文庫)


カズオ・イシグロの短編だ!ということで手に取ったのだが、すべての短編には「音楽」「男と女」「本当は才能があるのに(あったのに)それが世の中で認められず悶々としている人」という共通したテーマが潜んでいた。
ベネチアのサンマルコ広場で、ジャンゴが持っていてもおかしくないようなヴィンデージ・ギターを奏でる、共産圏出身のギタリストと往年の有名歌手の邂逅、ミュージシャンを目指して大学をやめるも、なかなか芽が出ないギタリスト、才能があるのにルックスが見合わないからと、マネージャーの求めに応じて整形手術を受けるサックスプレイヤー…登場する音楽家の葛藤が丁寧に書き込まれていて、時に少し切ない気持ちになる短篇集だ。