戦火のナージャ


(監督・共同脚本・製作:ニキータ・ミハルコフ/出演:ニキータ・ミハルコフナージャ・ミハルコフ、オレグ・メンシコフ/2010年/ロシア)
「太陽に灼かれて」から16年〜まさかの続編ができたことを昨年のカンヌ映画祭で知ってから、この映画が観られることを楽しみにしていた。
前作では、スターリンの大粛正(と、ある理由を抱えたドミトリの差し金)により、コトフ大佐は反逆者として囚われる。その娘が、この映画のタイトルにもなっているナージャだ。
あれから月日が経ち、コトフは処刑されたと報告されるも、実は地位を奪われてもなお、過酷な状況で生きながらえている。一方、娘のナージャも、アーセンティエフ大佐(かつてドミトリと呼ばれていた人)の計らいで、謀反者の娘であることを隠しながら、少年少女団として生きている。彼女はふとしたことから、父親の生存を確信し、父探しをしながら国内をさまようなかで、色々な戦争体験をする…。
ストーリーは、1943年、ドミトリが、諜報員の立場でコトフの居場所を聴きとりをするような形で、1941年のドイツとソ連の戦いの最中のコトフ・ナージャの様子を描き出す。
1941年と1943年、それに、親子が幸せだった1936年の情景(「太陽に灼かれて」で描かれた時代」)が交互に描き出されるため、ちょっとついていくのが大変。戦いの場面と、それに巻き込まれるコトフ、ナージャそれぞれに多すぎるほどのドラマがあって、これらの「点」を「線」にするのは少し難しい。
それでも、戦争にまつわるさまざまな残虐シーンと、そこで運命的に生き残る人たちの姿が、ものすごい感動をもたらすのはなぜだろう。アメリカ映画でみる戦争は、ヒーローばかりが印象に残るが、この映画に出てくる人間は、色々な意味で弱さをむき出しにしてくる。そしてその弱さが人殺しという形になったりするのが、なんとも苦しい。
戦争の惨たらしさ、人の命の儚さとたくましさ、親子愛の形、いろいろなメッセージに感情を大いに刺激された。ぜひ映画館で観るべき作品だと思う。

私の中で印象的だったシーンのひとつがこれだ。ドイツ兵に無意味に殺されるジプシーの人たちと少女。助けを求めてもだれも助けてくれない小さな村。切なすぎるシーン。これも戦争のリアル、なのだろうか。