言葉を育てる 米原万里対談集

言葉を育てる―米原万里対談集 (ちくま文庫)

言葉を育てる―米原万里対談集 (ちくま文庫)


チェコスロバキアソビエト学校で育ち、同時通訳者として活躍した米原万里さんの対談集。著名人との対話の中で、米原氏の生い立ちの話や同時通訳者としての彼女の苦労、そして異文化比較のおもしろさがわかる。
「ひとつの言葉でくくれる色々な現象が、民族によって微妙にズレている」という。だが、大部分の人は、一語一語が対になっていると思いこんでいる、というのはまさにそのとおり、だから通訳は大変だし、「そのまま訳してほしい」などというクライアント相手に、いかにその人が言いたいことを伝えるのか。通訳者は苦労するわけだ。
文化論に関する対話も多く収録されているが、「本当の平等っていうのは、"違うのに対等"ということなのに、日本ではみんな同じにすることが平等だと思い込んでいる」という部分には非常に共感できた。
イタリア語通訳の田丸公美子氏との対談は、抱腹絶倒。口説き言葉の話とか、日本語の形容詞の少なさからくる通訳の苦労とか、イタリア人が女を口説く際のほとばしる情熱とその矛盾など、笑いが止まらなかった。