「在外」日本人(柳原和子)

「在外」日本人 (講談社文庫)

「在外」日本人 (講談社文庫)


あれは、晶文社からハードカバーで出版されてすぐのこと。夢中になって読みあさったのは、20年くらい前のことだろうか、
昨年、この本に出てきた在外日本人108人のうちの一人と久々に再会したのだが、その時に実はこの本のインタビューに応じていたことを教えてくれた。数年前に柳原和子氏が逝去されたとのニュースをみてからずっと読み直したいと思っていたこともあり、さっそく中古本と取り寄せて、ここ数日はひたすらこの本を読みふけっていた。
かつて海外に出て、そこに根付いた日本人たちの苦労や喜び、アイデンティティとの葛藤…なかには天安門事件やユーゴ紛争、第三次中東戦争といった世界を揺るがす事件のさなかに当該国にいた人の経験も知ることができる。
「生きている人は誰も例外なくすばらしい物語と哲学、思想を語ると知る」とは彼女の弁だが、本当にそのとおり。ときに感情移入しすぎて涙しながらの読書となった。我が先輩のインタビューが掲載されている項から推測するに、インタビュー時の言葉遣いや雰囲気も忠実に表現されているように思う。そして、こんなに月日を経てもなお、未だ新しく感じることに驚いてしまう。
外国に住む日本人を取り上げた本は多くあれど、この本に勝るものはまさ知らない。私にとっての永遠の良本。