ミラル


(MIRAL、仏・イスラエル・伊・印、ジュリアン・シュナーベルJulian Schnabel監督、2010年)
パレスチナ人ジャーナリスト、ルーラ・ジブリールが原作・脚本を描いた、自伝を元にした作品。
パレスチナ内乱をきっかけに、イスラエルが台頭するなか、パレスチナ人戦災孤児を集めて「ダール・エッティフェル(子供の家)」を立ち上げたパレスチナ女性ヒンドゥ・ホセイニと、その教え子ミラルの数奇な生涯を描いた作品だ。
ヒンドゥ、そしてミラル以外にも2人の女性がフォーカスされており、パレスチナ女性のおかれた環境や苦悩、ガザ地区やその後起こったインティファーダの動き、またイスラエル軍が領土を広げていく手法なども、映画に盛り込まれている。インティファーダに身を投じたミラルが、運動のリーダーと恋仲になって運動にのめり込んでいったり、イスラエル女性と友情をはぐくむようなシーンも。ただ、いささか内容が盛り込まれすぎていて、お腹いっぱいになった。教育を通じて、パレスチナのプライドを教え、希望を与え続けたヒンドゥだけに話を絞ってもよかったのになぁ、と思うくらい。あと、本来アラビア語で会話されるべき部分が全部英語になっていたのは、少し残念。これだけ混乱している地域だからこそ、言語的な部分は忠実に再現してほしかったな…。
本作は、イスラエルとPLOにより結ばれた「オセロ合意」の頃の話で終わっているが、現実のパレスチナ問題はまだ解決には程遠いような感じがする。この合意に至るまでも多くの血が流されているというのに、むなしくなってしまう。