フランスにおけるマヌーシュ・ジャズの二大拠点といえば、イル・ド・フランス地方(というか要はパリ)、もしくはアルザス地方だと思っているのだがどうだろう。そんななか、ブルゴーニュ出身で活躍をはじめている若手グループを発見した。グループのリーダーはアドリアン・マルコAdrien Marco。名前から推察されるとおり、ピエモンテ出身のイタリア人移民の家系が出自である(そしてジプシーの血筋ではない)。ブルゴーニュ地方はYonne県オセールAuxerre出身で、マヌーシュ・ジャズの腕前を磨くべく一時パリに住んでいたこともあったようだが、現在もどうやらYonne県のどこかにお住まいだとか。
おもしろいなぁと思ったのは、この方、遅まきながら17歳の時にStochelo Rosenbergの演奏する、ジャンゴの"Où es-tu mon amour"を聴いてこころを奪われ、そのままマヌーシュ・ジャズ・ギタリストになる決心をしたとか。ジャンゴ系の音楽を志す人は、その道程をジャンゴから始めるのかと思ったが、もはや時代はジャンゴのフォロワーの実力者が引っ張っているのかもしれない、と実感したのであった。
…もっとも、私の読んだ記事の筆者が、ストケロとジャンゴ、二人のミュージシャンを取り違えていなければ、の話だが。(※記事によると、"Où es-tu mon amour"がストケロの名作、ともとれるような書き方がしてある)
ちなみに、Les Doigts de l'Hommeはブルターニュ地方出身。ケルトの色合いが強いこのエリアでマヌーシュ・ジャズバンドが出てきたことに驚いたものだった。マヌーシュ・ジャズの地域性が意識されたのは過去のことで、きっとそのうちどのエリアのジャズクラブでもマヌーシュ・ジャズが愉しめるようになるかもね、なんて思いを馳せてみた。遠く離れた日本でも、その魅力に取りつかれているミュージシャンがいるのだからね。
Adrien Marco(g)/Adrien Ribat(g rhythmique)/Karim Zouaoui(b)
www.lyonne.fr - A la Une - AUXERRE (89000) - A 24 ans, Adrien Marco est déjà un remarquable musicien de jazz manouche