アンヴィル!夢を諦めきれない男たち

The Story of Anvil, サーシャ・ガバジSacha Gervasi監督、2008年、米国

アンヴィルAnvilとは、カナダのヘヴィメタルバンド。業界の人には人気らしく、音楽業界の有名人(ガンズのスラッシュが出てきてびっくりしたけれど)はベタ褒めしているようなグループだ。アンヴィルは一瞬人気を博したものの、その後人気は終息。バンドの設立者であるリーダおよびボーカルとリードギターを担当するリップス、そしてドラマーのロブは、バンドだけでは食べていけないため、労働の合間を縫ってバンド活動をやっている状態だ。二人ともすでに50代の中年オヤジの域だといえる。
ある日、ヨーロッパツアーの話が舞い込むが、ツアーのアレンジは最悪だ。決してもうけが出ないような状況のまま、ツアーから戻る。そして、次に彼らが目指したのは、CDの制作。そこで、かつての名プロデューサーにかけあい、レコーディングを試みるのであった…。
私の聴く音楽にそこまでの垣根はないが、ヘヴィメタ(アンスラックスとかメタリカなどしか知らないが)はあまり聴かない。それでもこのドキュメンタリーには泣いてしまった。なぜだろう。たぶん、彼らがこの音楽に夢中になり、かつ芸術的才能があったがために、「学校にいって定職に就く」という親の願いに背いてまでバンドをやっていることとか、リップスとロブがあまりにも純粋で自分たちの音楽を信じて、いつかブレイクするということを信じて他人のコメントを忠実にきいて行動しようとするところ、仲の良すぎる二人が、互いへの想いの強さが故にケンカをしてしまうところ、決して裕福ではない奥さんたちが音楽中心の暮らしを嘆きつつも、夫とともに一緒に夢をみようとしているところ、弟の才能を信じ多方面にわたり援助を行う姉…きっと登場人物のみんなが優しすぎて、泣けたのかな。自分の知り合いの音楽家の行動や気持ちにも、ちょっとアンヴィルに重なるものがあるかもしれない。家族にもとても愛されていて、メンバーはきっとすごくいい人なんだと思う。
彼らの行く末に確実に影響を与えているのが日本だということ、これもまた嬉しい話だ。