バティニョールおじさん


2002年、フランス、Monsieur Batignole、Gerard Jugnot監督
ジェラール・ジュノGérard Jugnotが監督かつ出演しているのだもの、てっきりコメディかとばかり思ったら、テーマは軽くはない。ご本人いわくの「Tragicomedy」、悲喜劇ということか。
舞台は第二次世界大戦下、ナチス・ドイツ占領下のパリ。主人公の惣菜や主人エドモン・バティニョールは、娘の婚約者であるピエールジャンに流されて、隣人であるユダヤ人、バーンスタイン一家の告発を行う。そして一家はその見返りに、ユダヤ人の財産である広い家や配達用の車をゲットするのだ。家族は喜ぶが、かつてドイツと戦ったエドモンにとっては、決して喜ばしいことではない。そんななか、自分が告発した家の子供のうち末っ子のシモンが戻ってきた。そのシモンをかくまったことをきっかけに、成り行きでヒーローになったエドモンの冒険がはじまる。
すでに親や兄弟とはぐれてしまったシモンを、従兄の女の子とともに元来の逃亡先であったスイスに逃がすために、エドモンは奔走する。危ない橋を渡るのだ。賢いがおしゃべりな子供たち、とくにシモンのせいで、その逃亡劇は何度も危機に見舞われる。そのたびに、怖くて怖くて落ち着けなかった。なぜなら、パリのユダヤ人たちがどういう運命になったのか、すでに多くの映画で体験していたためだ。途中、シモンの過ぎた行動に腹すら立ってくるありさま。「お前のその勝手なおしゃべりで、どれだけの人が危険にさらされるのだ!」と叫びたい気持ちになったものだ。
ただ、成り行きヒーローだったとしても、エドモンはこうした状況下にある人間の縮図として、大変共感を持つことができた。重々しくなく重い出来事を描いた結果、もともと重い出来事はより重みをもって人の心に響く、そういう映画だと思った。

バティニョールおじさん [DVD]

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※ものすごく余談だが、この映画の舞台にJURA地方が出てくる。スイス国境の都市ということでMorteauというところ。惣菜屋のエドモンにもなじみあるソーセージが有名ということを知り、思わずググってしまった。
SITE OFFICIEL de la Saucisse de Morteau