ヒマラヤ杉に降る雪


2000年、米、スコット・ヒックス監督

個人的に第二次世界大戦中に日系アメリカ人がどんな扱いを受けてきたか、という問題、とりわけ収容所の問題に興味があるのだが、そんな話をしたところでこの映画のことを紹介された。題名は知っていたし、工藤夕貴さんの出演でも話題になっていたとは思うが、まさかこの話に私の興味のある話が含まれているとは知らなかった…。
時は1954年、真珠湾攻撃から13年というタイミングでのこと。日系アメリカ人の漁師カズオが、同僚のカールを殺した罪に問われている裁判が始まった。戦時中の土地問題等で、カズオにはカールを殺す動機がないわけではない。しかし、裁判は時に偏見に満ちた内容であった。カズオの妻であるハツエと幼馴染の地元新聞記者イシュマエルは、カズオが犯人ではないとする証拠を持っているが、ハツエへの恋心を捨てきれず、その証拠を提出できない…。
はじめは、「戦後の日系人への偏見」が主眼だと思っていた。Japなんて単語が頻繁に出てくるし、検察は、カズオが真実を隠した理由である、「世の中の偏見により、真実をいっても信じてもらえないと思った」という話もあったから。ところが、回想シーンで、カズオやハツエの歴史が描かれる。そして、ハツエの父親が無実の罪で逮捕されたり、家族がマンザナー強制収容所Manzanar internment campに送られて、イシュマエルとも別れざるを得なかったことなどが明らかになっていく。カズオが勲章をたくさんもらった、というようなことを行っていたのは、442連隊に所属していたことを示唆するものだろう。
うっかり、日系人の問題に立ち入りすぎたが、日系人差別がある一方で、アメリカらしく、「平等」に思きを置いて裁判を進める人もいるところが、この映画の救いである。また、カズエとイシュマエル、二人の出会いや別れ、距離に関する映像表現が前衛的で美しかった。
ところで、子供自体のカズエは、鈴木杏さんが演じているようだ。美しかった。

"Snow Falling on Ceders"というDavid Gutersonの原作も読んでみよう。