落語は神楽坂や新宿あたりでちょこちょこ接するくらいしか経験がないなか、お誘いいただいてこのイベントに来た。お誘いくださった方から課題として出された図書は「談志がしんだ」という、立川談四楼による小説(ただしほぼ実話に基づいているらしい)だったのだが、忙しさにかまけてこれを読まずにイベントに来てしまった私を許してほしい。
というわけで、1983年に立川談志が落語協会を脱退して、「立川流」を創設したことはなんとなく知っていても、そのきっかけとなったのは、不当な形で落語協会の真打昇進試験を落とされたことであり、落とされた弟子というのが立川談四楼であったことは知らなかった。
冒頭部分は、この日に逝去が報道された高倉健氏と家元のかかわりから始まり、品のある笑いを振りまいてから、するっと本題に入っていく。本日の2席は、「人情八百屋」と「鼠穴」。両方とも人情噺といわれるものだったけれど、スリリングな探偵小説のような展開で面白かった。どこでオチが来るのか、その間際までまったくわからない。でも、オチの一言が切れがいい。「鼠穴」なんかは弟と兄の再会のシーンで途中で涙すら出そうになる始末…まったくすっかりお年寄りのような反応をしてしまった自分にも愕然としてしまった。
広瀬和生(「BURRN!」編集長にして落語愛好家)と談四楼のトークも面白かった。唯一残念だったのは、家元のお得意な話やその特徴といったマニアックな話にまったくピンとこなかったこと。タイトルで知っているのは「芝浜」くらいか。古典落語の数々の演目も、噺家さんによってまったく違うそうで、談志の噺は短く内容を割愛した潔いものが多かったらしい、というのが想像できた。
うーん、今まで鑑賞した落語はその場の愉しみでしかなかったけれど、今日をきっかけに、古典落語をしっかり鑑賞してみたいという気持ちが生まれた。この間観た映画のお陰で出囃子にも興味がわいてしまった。そういえばお二人のトークの前の出囃子、咄嗟に「Facinating Rythemみたい」と思ってしまっただが、あれは何だったのか。気になる。
落語をいろいろな角度からみてみたい、と思わせる、いいきっかけができた夜。まずは課題図書からはじめてみようか。