毛沢東秘録 上・下(産経新聞「毛沢東秘録」取材班)

毛沢東秘録〈下〉

毛沢東秘録〈下〉

毛沢東秘録〈上〉

毛沢東秘録〈上〉

いわゆる文革、つまり文化大革命の前後から毛沢東の逝去、そしてその後の話を、関係者の手記やら文書から改めて浮き彫りにした本。本は、「四人組」と言われる毛沢東の取り巻き組の逮捕話から始まる。毛沢東の妻である江青中国共産党副主席であり当初国防省でもあった葉剣英の水面下での戦いは、毛沢東が逝去してすぐ始まったらしいのだが、そうした水面下の戦いや攻防が具体的に書かれていて、面白い。一気に読み切ってしまった。
北京市内のなかで、「中南海」と呼ばれる、中海・南海という湖の周辺は党幹部の専用エリアらしいのだが、秘密の話し合いはだいたい中南海で行われている印象だ。(そう、中南海は単なるタバコのブランドではないのだよ)。そんな、歴史を変える場面までをも細かく描き切った点が、この本をよりおもろくしているのではないかと思った。
それにしてもこの文革の主役は巧みに人を動かしていく。妻の暴走を見て見ぬふりをしつつ、ちょっとクギをさしてみたり、明らかに賢い鄧小平を軟禁をしたと思ったら党籍はく奪については拒否したり、国家主席劉少奇を指名したのに文革の折に紅衛兵たちの勢いに任せて批判台に立たせて拷問したり、後継者指定した林彪を追い詰めてみたり(ちなみに林彪は墜落死している)、玉虫色に意見を表明しながら周囲の人間を動かして人を思い通りの状況に持っていくその手腕に感心した。