草間彌生氏って新宿区名誉区民だったりするので、てっきり東京の人とばかり思っていたのだが、実は松本出身らしい。というわけでこちらは、信濃毎日新聞の連載をまとめた本だ。彼女の人生が写真とともに細かくつづられている。
ここ数年は、直島のベネッセアートサイトの入り口に彼女の作品が鎮座していたり、日本のみならず海外でも現代アートの展示場に行くと必ず作品をみかけるアーティストでもあるが、実は荒波を乗り越えてきた人だということがよくわかる。ドットの幻覚や幻聴に悩まされるなか、それらから開放される唯一の手段が絵だったのだが、両家の人と結婚して家庭を築いてほしいと願った母親に反対されて画材をすべて捨てられた経験。それでも絵を描きたいと願って隠れて描いた話などは、壮絶だ。
若かりし頃は過激なアートムーブメントが報道され、身内は地元の人の目に触れさせまいと草間の掲載された雑誌を買い占めたりしたとか。でも今や松本が誇る世界的アーティストなのだから、もっともっと草間氏のアートを発信していってほしい。新宿区に負けることなく…。地元新聞がまとめたこの本は草間氏の半生を知る上で重要な1冊だと思った。
草間彌生 前衛の軌跡 YAYOI KUSAMA LOCUS OF THE AVANT-GARDE
- 作者: 園田清佳,永田由美子
- 出版社/メーカー: 信濃毎日新聞社
- 発売日: 2013/05/27
- メディア: 単行本
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