幸せはシャンソニア劇場から


2009年/フランス・チェコ・ドイツ/FAUBOURG 36/クリストフ・バラティエ監督
映画の舞台は、レオン・ブルム政権下、ナチス・ドイツの影響がフランスに表れてきた頃だ。1936年のパリ。ピグワル(ジェラール・ジュニョ)は、フォブールにあるシャンソニア劇場の従業員だったが、不況のあおりを受けて失業することに。しかし、妻の不貞から離婚をすると同時に、息子のジョジョを失うことになったピグワルは、息子を取り戻すためにも働かなければならない。そこで、シャンソニア劇場のオーナーとなって昔の仲間を集め、劇場を再建することになった。
資金繰りがままならぬまま劇場を開幕させるも、さまざまなハプニングが発生する。かつて物まねでならしたジャッキーの芸もさっぱりウケない。そんななか、劇場の土地オーナーであるギャラピアが気に入ったという、司会兼CM担当のドゥース(ノラ・アルネゼデール)がひょんなことから歌った歌をきっかけとして、シャンソニア劇場から歌姫として羽ばたいていく。
息子から手紙の返事は来ないし、ピグワルのやさしさから手放してしまった劇場のトップスターのドゥースも失ったことで劇場の収入はなく、ピグワルは追い詰められていく。それを救ったのは、ドゥースの歌声をラジオ男(映画では"Monsieur TSF"と呼ばれていた)が聴いたことだった。20年ばかり引きこもり暮らしをしていた男は、ドゥースの声で、母親のローズの娘であることを察知し、わざわざドゥースに会いに行く。そして、ドゥースにシャンソニア劇場を救ってくれるよう説得するとともに、時流にあったミュージカルを作り上げるのだった。それがFourbourg 36だ。劇場の支配人から従業員、売れない芸人など、失業者たちを起用したミュージカルは大ヒットし、劇場は軌道に乗った。そんな大ヒットですっかり資金繰りも片付いた、パリ祭の夜、事件が起こったのだった…。
ジェラール・ジュニュはすでにいろいろな映画でおなじみだったが、ドゥース役のノラ・アルネゼデールが、お客さんに乞われてうたった"Loin de Paname"は素晴らしいパリ賛歌だった。
ピグワルと息子ジョジョの再会の歌も、息子にものすごく期待する親バカソングもとってもよかったけれども(これはのちにちゃんと"Faubourg 36"にも組み込まれる)、全体的に曲が素晴らしくて、「シャンソニア劇場」、という映画タイトルからトラディショナルなシャンソンだけを思い浮かべてはいけない。ミュゼット風も曲もあるけれども、アメリカのミュージカル映画のトレンドを大いに反映した曲もあって(いや、この映画の後半の映像は絶対にそれを意識しているに違いない)、気分が明るくなる。


まだ見ぬ海にみんなでドライブして出掛けて、散歩して海で足を濡らそう、ヴァカンス最高!Vive la vacance!! って歌う"Parti pour la mer"とか、もうちょっと涙が出るすばらしさ。"Il y a"は、リハーサルの段階で物まね芸人のジャッキーが歌うバージョン、そしてラジオ男がドゥースに聴かせるバージョンもよかったなぁ。

決して明るいばかりの映画ではないけれども、心がつらいときに少し元気を与えてくれる映画だ。