潜水服は蝶の夢を見る


Le scaphandre et le papillon, アメリカ・フランス、Julian Schnabel監督、2007年

主人公のジャン-ドミニク・ボービーJean-Dominique Baubyは、脳溢血により「ロックトインシンドローム」となる。本人は意識もあって言葉もわかるのに、その意思を外に伝えるための動きがとれないという病だ。ジャンは雑誌ELLEの編集長をしており、自由な私生活を送っていた。もともと本の執筆契約を結んでいたジャン-ドミニクは、唯一意思表示ができる左目と特殊なアルファベット表を使って、本の執筆を始めるのだった…。

まずは、42歳という若さで急にこういうことが起こるんだ…という恐ろしさを想った。そして、この実話により、ロックトインシンドロームの患者の世界や思いを少し思い図ることができるということで、意義深い作品なんだろう。

物語はこの病気となる前の彼の回想シーンといまの状況、そして彼の外に出すことができない内なる感情が並行して表現される。カメラワークが細かい。たとえば、彼の状況がまだよくわからない時は、彼の目線を表現するカメラのフォーカスはぶれまくっているが、「左目のみが彼の表現ツール」ということがわかると、彼に対応する人々は、きちんと彼の左目の前にやってきて適切な距離で話すので、少しだけカメラのフォーカスが安定するのだ。をういう細かさに感心した。
過去に比べれば自由はないし、自分の意思もなかなか伝わらないが、主人公はいたって普通に日々を暮らそうとする。そして、周りの人も根気よく彼とコミュニケーションをとろうとしている。原題である「潜水服と蝶」というのもなかなかいい。そして、邦題の「潜水服は蝶の夢をみる」はもっと良い。評価はさまざまなようだが、私はこの映画、好きだった。

人が病気や事故にあうと「神頼み」をしたり、信心深い人が本人の意思にかかわらず色々やってしまうというのも、これまた世界共通だ。