「トガニ 幼き瞳の告発」

도가니、2011年、韓国、ファン・ドンヒョク監督

主人公の美術教師イノ(コン・ユ)は、一人娘を母親に預けて、地方都市の聾学校に着任する。校長と行政室長(要は総務みたいな感じかな)が双子の兄弟(両方ともチャン・グァン)だが、俳優の温水洋一さんから人の好さや笑いを消し去ったような怪しい風貌だ。生徒も無表情で、その学校の異様な雰囲気を快く思っていない。
ある日、夜の学校で子供の悲鳴を聞く。ドアをあけようとして警備員に止められるため、なにが起きたかはわからなかったのだが、そのうちに学校関係者が子供たちに暴行を加える姿をよく見かけるように。たまたま知っていた人権センターの担当者、ユジンに連絡をしたことをきっかけに、子供たちが学校で性的虐待を受けたいたことを知り、裁判を起こすことに。
しかし、校長側は権力を盾にあらゆる手段を使って、罪を軽くしようと画策するのだった…。

まず驚くのは、これが実話に基づいた話で、しかも2000年代に起こった出来事であるということだ。権力のある悪人たちは賄賂を贈ったり、過去に汚点がある人を救ってあげるなどして弱みを握り、悪いことがあっても隠ぺいできるような体制ができている。正義がまったく通用しない、恐ろしい状況になっているのに、だれも声を上げられないことになっている。
しかも、まさかの裁判長までも買収されている結果、判決が軽すぎる。しかも、加害者たちは実刑もなく、この判決のあとも復職して教壇に立っていたというのだから、驚く。厚顔無恥甚だしい。

コ・ジヨンという人が原作の小説を映画化したというが、これを問題視して映画化に踏み切った監督や出演した俳優たちの勇気に感動する。この映画が韓国世論を変え、行政所長に前よりは重めの刑が下ったというから、韓国社会はそこまで腐ってはいなかったとみていいのだろうか。
とにかく衝撃の映画。暗い。でも、裁判になった段階で、今までやられっぱなしだった子供たちがどんどん強くなって証言していく姿だけが救いだ。