"君の名前で僕を呼んで"。純粋すぎるラブストーリー。

Call Me By Your Name、2017年、イタリア、フランス、ブラジル、米国、ルカ・グァダニーノ監督

舞台は80年代かな。近年撮影されたとは思えない、レトロな雰囲気だ。
主人公のエリオは人種は不明だが、フランス語、イタリア語、英語を操る青年で、考古学者の父と知的な母親の間で育った一人息子だ。趣味は音楽で、今年も夏を過ごすために、北イタリアの別荘にやってきた。

エリオの父は毎年自分の学生を別荘に招くことにしており、この年招かれたアシスタントが、オリヴァーだった。イケメンで知的、そして自信満々でともすれば不遜にみえる物言い。はじめは、いけすかないと感じていたエリオだったが、それと同時に何ともいえない感情に包まれる。そう、エリオはオリヴァーに恋をした。その気持ちをかき消そうと、やはり避暑に来ていたフランス人の女の子マチルダとも関係を持ったりしてみるのだが、やはりオリヴァーに惹かれる。そして、とうとうオリヴァーに気持ちの確認もしたのだった…。

まったくあらすじを知らなかった私も、ある夜のダンスパーティーでオリヴァーに惚れた女の子をエリオがくっつけようとしているのを知り、オリヴァーが「余計なことをするな」と怒るところあたりから、状況がわかってきた。奔放かと思ったオリヴァーが、エリオの将来を想って自分の気持ちをぐっとこらえる姿は痛々しくもある。一方で、まだLGBTのような言葉も頻繁に使われていなかった時代にエリオの恋についてを知った際にみせた、ご両親の態度がそれぞれ素晴らしい。世の中、こんなに理解のあるご両親がいれば、人はもっと自分の気持ちに素直になれるのではないか。

We rip out so much of ourselves to be cured of things faster than we should that we go bankrupt by the age of thirty and have less to offer each time we start with someone new. But to make yourself feel nothing so as not to feel anything - what a waste!
人は早く立ち直ろうと心を削り取り、30歳までにすり減ってしまう。新たなあいてに与えるものが失われてしまう。
しかし、何も感じないようにすること、感情を無視することは、あまりにも惜しい。

この映画のオリヴァーのご家族は、残念ながら自分の感情が赴くままに生きることができなかったようだ。でも、本当に好きな人がいながらも、世間体を考えて気持ちを封印している人は、この世界に今もたくさんいるのだろうな。