コロナだから実現する、マヌーシュジャズギタリストたちのリモート共演

コロナのせいでどの国でも人が集まる機会がなくなっているのはご存知のとおりだろう。当然ライブ活動も禁止されているので、色々なミュージシャンが自宅でライブを開催している。日本で有名かつ毎晩6000人ほどの視聴者を誇るライブを自宅で連日開催しているのが、ジャズピアニストの小曽根真氏。日本時間の夜9時から生ライブを楽しめるとあって私の周りにも視聴者は多いし、見逃しても現在すべてYouTubeでみられる。
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39日も継続して1時間のライブをやり続けているミュージシャンもなかなかいないのではないだろうか。

その他、私が楽しんでいるのは、ブラジルのギタリストJoyceのライブ。オンタイムでは観られないにしろ、アーカイブがFBに保存されている。
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あとは、イスラエル出身のギタリスト、Yotam Silbersteinも#quarantineduos と題して、世界中に散らばっている有名ミュージシャンとデュオ演奏を続けている。これも、生でみるには時間帯はなかなか合わないけれども、急に大物とデュオするので、見逃せない。最近では、DominguinhosとかToninho Hortaとの共演にテンションがあがった私だ。
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では、マヌーシュ・ジャズギタリストたちはどうだろう。ボサノヴァ等のジャンルに比べるとソロで魅せ続けるのが難しいジャンルだし…と思いながら探してみたら、あったあった。オランダのレーベルSINTI Musicが、ベネルクス3国で活躍するミュージシャンたちのリモートライブをアップしてくれていた。メンバーは、ファピ・ラフェルタンFapy Lafertin,、ストーケロ・ローゼンバーグ Stochelo Rosenberg、パウルス・シェーファーPaulus Schäfer、それにベーシストのニック・マクガイアNick McGuireの4名。ニック氏のことを調べてみたら、英国生まれだが、オランダでThe Jazz Jargonitesというバンドをリードしているとのこと。

演奏曲は、"Quand je l'ai Rencontré"という曲。「私が彼/彼女に会った時」という意味だが、初めて聴いた。ジャンゴがカバーしているのかしら。この曲の作曲者、Charles Welty Tarzanという人を調べてみたら、カトリックの神父様らしい。1950年代に、フランスには"La Mission"という団体が立ち上がり、マヌーシュコミュニティに対するカトリック布教を進めたという。この団体は、マヌーシュたちにコミュニティを捨てることは強要しなかったこともあり、多くのミュージシャンたちが在籍しており、ジャンゴの奥様Naguineも信者だった。バイオリニストのPierre Gagar Hoffmanなどは、第二次世界大戦中、ナチスの迫害から逃れるためにスイスに行こうとしていたジャンゴとともに、国境の町トノン=レ=バン にて夜な夜なジャムセッションと繰り広げていたとか。
[Django Station] - Gagar Hoffmann / Cantique Tzigane

このジャムセッションにたまに連れてこられていたのが、ギタリストのCharles Welty Tarzanらしい。ちなみにこのLa Mission(正確には、La Mission evangelique des Tziganes de Franceというみたい)は今も存在していて、Charles Welty Tarzanの奥様のメッセージが掲載されていた。晩年のCharles氏の姿もこちらで確認できる。
Témoignage Lacouac Welty | Vie et Lumière

調べものにはまって説明くさくなってしまったが、曲も演奏も素晴らしい。寝る前のお伴にどうぞ。

はやくコロナが収束して、どこにいてもライブが楽しめる世の中を期待しています。