マヌーシュ・ジャズの世界で活躍するヴァイオリニスト、オロレのリーダー作"Un Soir d'ete"の、粋な仕掛けとは。

ヴァイオリニスト、オロレ・ヴォワルケAurore Voilquéに興味を持ったのは、アンジェロ・ドゥバールAngelo Debarreのみならず、Jaques Dutroncの息子でやはりシンガソングライターとして活躍するトマ・ドゥトゥロンThomas Dutroncやサムソン・シュミットSamson Schmitt などの大物とも共演していたからだ。調べてみたら、グラッペリの弟子としても知られるヴァイオリニスト、Pierre Blanchardピエール・ブランシャールにも師事していたそうなので、腕前はもちろん、人脈も作りやすかった可能性もある。フランスでコロナの感染が拡大し、外出が自由にできなくなるなかで、文化の危機を訴えるべくコンサートを自宅窓辺で実施したことも記憶に新しい。
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2020年10月に、そんな彼女が有名ミュージシャンとともに、二枚目となるリーダーアルバム"UN SOIR D'ETE" をリリースしていた。日本語でいえば「ある夏の夜 」みたいな意味かな。
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Aurore Voilque Trioのメンバーは、リズムギターにマチュー・シャトレンMathieu Chatelain、そしてベースにクロディウス・デュポン Claudius Dupont という陣容なのだが、メインギターには第1作目に続き今回もアンジェロ・ドゥバールが入ってきているところがポイントだ。さらに、今回もトマ、そしてあのサンセヴェリーノSanseverinoも参加し、オロレとのデュエット曲を披露している。オロレは歌も歌えるヴァイオリニストなんだな。こちらがそのメイキング映像だ。

このティザーだけでも、あまりの豪華さにすでに満腹なのだが、この動画以外に最近連続してアップされた動画がある。サムネイル画像から想像しても、また、"Bonus Track"と書かれていることかれも、当然アルバムに関係していると思ったのだが...おかしい、どのレパートリーもアルバムに収録されていないのだ。

"I surrender Dear"

"Black and White"

"From This Moment On"

"Sarah"

"Toi"

"Tears"

もしかして日本版だけ収録曲が違うのか? 調べてもよくわからないなと思っていたが、動画のコメント欄をみて、「ボーナストラック」の意味を取り違えていたことがわかった。アルバム"Un Soir d'ete"は、オロレの自分のトリオ+数々のマエストロたちがレコーディングをして完成させた作品である。どうやら、そのレコーディングが終わった後、(そしてマエストロたちがスタジオを去った後)、これまたマヌーシュ・ジャズ界を牽引するギタリスト、アドリアン・モワニャールAdrien Moignard, ロッキー・グリセットRocky Gresset、そしてセバスチャン・ジニオSebastien Giniauxを招いて、自分のトリオとともに各自2曲ずつレコーディングし、アルバムにしたようなのだ。このメンバーって、ノエ・ラインハルトNoé Reinhardtも参加すれば"Selmar #607"になる! というオタク的な発想はさておき、すごく価値がある音源なのではないだろうか。オロレに直接連絡すれば購入も可能だとのこと。文化の危機を救う意味でも、素敵な試みだ。