ジャンゴ・ラインハルトの音楽を世界に広げた立役者。ビレリ・ラグレーン音楽活動40 周年とニューアルバム

昨年はビレリ・ラグレーンBiréli Lagrèneの音楽活動40周年だったらしい..というわけで、地元フランスのテレビ局が特集をしていた。ここでビレリが話している言葉は、たぶんフランスの地域語の一つであるアルザス語だ。私にはドイツ語がわからないので100%の自信はないのだが、このビレリの紹介コーナーの後にアルザス語の講座が出てくるので、たぶんそうなんだろうと考えている。
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このニュースでは、ビレリがかなり若い頃から「ジャンゴ・ラインハルトの後継者」として注目を浴び活躍を続けてきた結果、55歳にして活動40周年を迎えることになった、と説明している。また、世界中で活躍することになってもなお、ビレリが定期的に出身地(アルザス地方バ=ラン県スフレンアイム)であるアルザスに帰ってきては、ライン川沿いの散歩や森、鳥の声など、豊かな自然を楽しんでいることも紹介している。ビレリはコロナ禍でも活動を続けており、(オンラインでフェス等に出演していたのはご存知のとおりだろう)、なんと今年春にリリース予定のニューアルバムもあるとか。そのアルバムでは、ビレリが一人でピアノ、ギター、ベース、シンセ、ヴァイオリン等複数の楽器を演奏して、それを技術的に融合させたアルバムらしい。どうしてもパット・メセニーが昔挑戦していた「Orchestrion」を思い出してしまうが、どんな感じなんだろう。天才のままミュージシャンとしてのキャリアを駆け抜けていくビレリ・ラグレーンの新作を期待して待ちたいと思う。

ところで、今回のこの報道をみてから活動40周年の軌跡を自分で振り返ろうとwikiをみてみると、デビューアルバムは「Routes to Django (1980年、Antilles)」であるようにみえる。でも、実際の40周年は2021年...この1年の誤差は一体なんなんだ!と疑問に思っていたのだ。でも、色々調べてみると、たぶんこういうことではないか。

マヌーシュ・ジャズ界の神童、ビレリは、かなり早期から活躍していた。14歳の時には、ストラスブールで行われたツィガーヌ(ロマ)音楽祭で1位を獲得したのは有名な話だが、その前にはすでにあのステファン・グラッペリStéphane Grappelli に出会ってグラッペリのコンサートにも招待されたり海外ツアー経験も豊富だった。1980年には、ドイツのKrokodilという場所で自身のバンドを率いてコンサートをしていたらしく、その時のライブの様子が「Route to Django」としてリリースされてはいた。
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ただし、きちんとスタジオ録音して作られたアルバムは、1981 年にリリースした「Bireli Swing ‘81」。これを以てビレリは正式にデビューしたとみなされており、2021年に40周年ということなのではないか。
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こんなことをぐだぐだと考えていたのだが、もしかしたら、単に「40周年」なのか「40年目」なのかの解釈の違いなのかもしれない。我が家にあった「Route to Django」のライナーノーツをみてみたら、「これがビレリ・ラグレーンのデビューアルバムだ」と明記してあった。え、それでもおかしくない? ま、でもまあいいか。
ビレリ曰く「ミュージシャンは動けなくなるまで演奏する。そこに引退という言葉はない」とのこと。これからの活躍に期待しよう。