狂気の金魚に魅了され。深堀隆介展 「金魚解禁 日本橋」@日本橋三越

今年のはじめだろうか、友人が、この方の作品にえらい感銘を受けて作品を買ったんだ、という話をしていた。決してお安い買い物ではないだろう。タライの中に泳ぐリアルな金魚のオブジェ作品として認識していたが、きっとさぞ魅力的な作家なのだろうとおもっていたら、ちょうど日本橋三越でこの方の展示会をやることを知り、行ってみることにした。

プロフィールによると、アーティストとして行き詰まっていた時に部屋で買っていた金魚に魅了され、金魚を描き始めたとか。金魚に救われた体験を「金魚救い」と呼んでいるとか。ひたすら金魚を描いているためか、彼のアトリエの名前は「金魚養画場」だとか。

三越の催物会場に展示されている作品はほぼすべてが販売品であったが、どれも素晴らしかった。なかでも収穫は、はじめて彼のアクリル作品の成り立ちを知ったこと。よく夏になると、透明な羊羹に金魚が泳いでいる和菓子を見かける。あれは、水に見立てた羊羹や寒天をある程度固めたところに、あんこや練り切りでつくった金魚やお魚なんかをちょうどいい位置に沈めてできる。
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あのアクリル作品も、てっきりオブジェを沈めているのかと思い込んでいたが、あれはアクリルを少しずつ流し込みながらその上に絵を描いている、というのを今回はじめて知った。なんという気が遠くなる作品! それこそ、金魚が10匹もいるような作品は、どうやっているのか。会場には、水の中に金魚だけでなく錆びた空き缶も沈んでいるような作品もあったが、あの錆びた空き缶も絵なのかしら...リアルすぎる。

残念ながら会場は撮影禁止だったので、こちらの動画などで少しでも彼が描く狂気の金魚をみていただきたい。
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ちなみに、三越の1Fには会期中に深堀氏が手がけた金魚のライブペインティングが置かれていた。すごいな...色といい形といい素晴らしい。


そして、会場の隅には、深堀氏の手書きサインも。これまたもちろん金魚。インタビュー映像をみる限りでは、緻密なタイプというよりは感性の赴くままに描くタイプのようにみえるが、その作業量は考えるだに気が遠くなりそう。この方はこれからも金魚を向かい合っていくのだろうなぁ。