ヘラルボニーは、アートを起点に新たな価値や文化の創造を目指す福祉実験カンパニーとして、アール・ブリュットなどと呼ばれる、知的障害のある作家の描くアートデータのライセンスを管理やビジネス展開をしている会社だ。このたび、同社が国際アートアワード「HERALBONY Art Prize 2024」を設立したと知った。世界28カ国から924名の作家が応募したというこのアワードのグランプリ作品が展示された展覧会に行ってきた。
こうした活動は、いわゆる「エイブルアート」「アウトサイダー・アート」などと呼ばれているときから見ていたつもりだが、今回の展覧会に出展された作品はどれも素晴らしかった。私の中では有名な、やまなみ工房からのアーティストが数多く出品・入賞していることも印象的だった。
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Tiffany blueの壁にかけられた、優勝作品は浅野春香氏の「ヒョウカ」という作品。評価されたい、という純粋な感情からできた作品らしいのだが、テーマは満月の夜のサンゴの産卵。お父様が珊瑚の研究者ということの影響もあるのだろうか。アーティスト浅野氏を追った動画も公開されていた。
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その他の作品を見てみると、タイトルがついていない作品が多い気がして、すごくリアルに感じた。本当にアーティストが思うままに描いた作品には、もはやタイトルも不要なのかもしれないし、無理にタイトルをつける必要もないのだろう。
グランプリ作品以外に私が気に入ったのは、鳥山シュウ氏の「ウガンダ」という作品。黒く塗った画用紙に、白い細ペンで細かくいかにもサバンナにいそうな動物群が描き込まれている作品だ。
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中野道人氏の作品も良かった。細かいブロック状のものと余白がいい味を出している。
gallery MAPO (ギャラリーマポ) 中野道人 | おおいた障がい者芸術文化支援センター
画用紙をつなぎ合わせて一つの作品にしたような大作もあったが、細かいモチーフをひたすら描いて大きな作品に仕上げるには相当な集中力が必要だろう。写真ではこの細かさは伝わらないので、ぜひ実物をみてほしい。作品の中には、独特の色合いから、グッズ化が期待されるものも。アーティストのギャラリートークなどもじっくり聞く機会が欲しいと思った。